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ノクターナル・アニマルズのhorahukiのレビュー・感想・評価

ノクターナル・アニマルズ(2016年製作の映画)
4.3
初トムフォード!
評判が良いので見てみましたが、噂に違わず素晴らしい作品でした♫

あらすじ…
アートギャラリーを経営し非常に裕福な主人公。地位も名誉も何もかも手に入れたはずなのに、毎夜眠れず、なぜか心は空虚さで溢れている。そんな主人公の元に、19年前に別れた小説家の元夫から荷物が届く。それは『ノクターナル・アニマルズ』という発表前の彼の新作小説だった。元夫の意図がわからないまま小説を読み進める主人公だったが…。

劇中劇(ノクターナル・アニマルズ)の内容が完全に田舎怖い系ホラーで大好物。私にとってトムフォード監督はドゥニヴィルヌーヴ監督と並んで、ホラー映画を撮って欲しい人の双璧になりました。ただ、完全にホラーの文脈に沿わせているにもかかわらず、ホラーにしたくないという監督の強固な意志も感じ取れたので、本人的には撮りたくなさそうではありますが…(^_^;)

小説の内容を劇中劇として見せるシーンが映画の大半を占め、その合間合間で現在の主人公の空虚さや過去の回想を見せるという構成になっています。劇中劇が『ブレーキ・ダウン』を思わせるような胸糞ハラハラ展開になっているため引き込まれました。でも、保安官の性質や、時間の進ませ方、犯人の言動、犯人への対応等、意識的にギリギリホラーにならないところで留めてるのが非常に残念。そこまでやるならホラーが見たいという、映画の良し悪しとは関係ない、ただの私の好みの問題ですけどね(笑)

19年間連絡を取っていなかった元夫がなぜ急に主人公に小説を送ってきたのか。その意図は作中では明確には示されず、観客の解釈に委ねるような作りになっています。ただ、本作は訳のわからん抽象的な作品ではなく、作中劇が独立して非常に優秀なエンタメになっているため、観客を最後まで引き込み続けて離さない「面白い」作品になってるんです。そして鑑賞後、作中劇が示したかったことや、主人公と元夫に考えを巡らせ、鑑賞後も観客を夢中にして離さない。観客の心を掴むという点では本当に素晴らしい作品だと思います。

鑑賞中は続きが気になって仕方なくて夢中で見てしまうし、完全には説明せずに観客にこの映画はなんだったのかと考える余白も作る。この余白が絶妙で、観客が元夫の意図を自然と考えたくなるように、作中で描くとこ・描かないとこのバランスがしっかりと考え抜かれている。そして何より、本作が純粋に面白いからこそ考えたくなるし、考えるのがメンドクサイとは思わせない。そういった緻密さが鑑賞後も観客の心を引き込んで離さない。

本作の意図については監督が自身のインタビューで語ってはいますが、別の解釈も成り立つような幅を意図的に(恐らく)設けているところもうまい。作中劇の登場人物がそれぞれ何を表すのかは様々な解釈ができるように思います。現実の元夫については、観客からは何もわからない。わかるのは過去(19年前)のことのみ。この19年が幅を生む。キャッチコピーは復讐か愛かとなっていますが、正直どちらとも取れる。でも何より重要なのは主人公にとっては過去を振り返ることで自分や現実を見つめ直す「気づき」の物語だったということ。とても面白かったです♫見てよかった(*^^*)
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