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ノクターナル・アニマルズのmaverickのレビュー・感想・評価

ノクターナル・アニマルズ(2016年製作の映画)
4.0
元夫が「君へ捧ぐ」と執筆した小説を別れた奥さんへ送ってくる。彼への想いを胸に彼女は小説を読み進める。元夫役のジェイク・ギレンホールが、元嫁を執拗に追い詰めるサイコな話かと思っていたが、そういうわけではなかった。怪演のイメージのあるジェイク・ギレンホールのせいで勝手にそう連想してしまった。でもやっぱり内容としては、男女の泥々とした部分が描かれている。ライトでさらりとした気持ちの良い映画ではないことは確か。元旦那と別れて再婚し、生活水準の高い暮らしを手に入れたものの、今の夫とは淡白な関係に陥り、仕事も上手くいかない空虚で満たされない毎日を過ごす彼女。そこへ昔の夫から届いた小説。彼との過去と照らし合わせながら彼女は読むことに没頭する。映画はこの小説の内容を彼女の頭の中のイメージ映像として写しだされており、ジェイク・ギレンホールが夫役と兼任している。結構ショッキングな内容で気持ちの良いものではない。彼女の今と昔、小説の物語とで話も入り乱れ、一見すると難解で不快感を感じる映画のようでもあるが、複雑な男女の心理を表現した部分が非常に面白いなと思わせる深い作品だ。エイミー・アダムス、ジェイク・ギレンホール共にそういう複雑な心理を見事に表している。元夫が書いた小説は彼女への想いがそのまま表されている。よく作品は書き手が自己投影されると言われるが、彼が彼女と別れた気持ちはどうなのかという所に意識して観てみると面白い。豪華キャストが揃ったトム・フォード監督の傑作です。
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