昔の男から突然送られてきた小説「ノクターナル・アニマルズ」を読み、その中に書かれている残虐な復讐譚以上に、もっと何か個人的な問題を突きつけられて揺さぶられる女・スーザンのお話。この映画そのものが復讐譚然としているんだけれど、それだけじゃないからすごい。
スーザンが読んでいる小説の情景が彼女の主観映像として語られるところがミソで、だから「小説の主人公=小説の作者・エドワード」として表れる。
現実世界の人間関係と小説世界との間に複雑なメタファーと構造の反復があって、読み応えがある。だからといって煙に巻くようなイヤミな映画じゃないのがいいね。アーティスティックな色を出しているわりに脚本が技巧的に作り込まれている。
あと気持ちよかったのは現実⇔小説世界の導入時に使われたマッチカットの鮮やかさ。最初は明確に意識を小説へと引き戻すガジェットがいくつかあったのだけど、後半どんどんそれが薄れて、何もないのにバチバチ世界が行ったり来たりするような感じが統合失調症的でよかった。
目に隈作るほど不眠ぶっ続けでいたらそりゃそうなるよねというような。