こなぱんだ

ノクターナル・アニマルズのこなぱんだのレビュー・感想・評価

ノクターナル・アニマルズ(2016年製作の映画)
4.0
全てが素晴らしかった……
トムフォードは本当に天才以外の何者でもないという気持ちにさせられました。恐るべし。中盤、中だるみしそうな部分があったので4.0。それでも素晴らしかった。

まず、オープニングのカッコ良さたるや。さすがトムフォード、画面の色の綺麗さたるや本当に素晴らしいです、個人的には黒沢清の撮る日本の廃墟が好きなので、こういう派手な画面はそこまで感動しないのですが、このオープニングには痺れました。かっくい~~~。本当にオープニングに出演している全てのふくよかな女性が最高に美しかった。感覚的にはトムフォードは物として対象を撮っているな~~~!!という感が強く、そこも面白かったのですが。

そしてそして。特に最高だったのはスーザンが読む小説「ノクターナルアニマルズ」のシーンで、ヤバい奴らに絡まれて妻と娘が攫われるシーン。これ、本当に本当に天才じゃないですか??
もう序盤の時点で「あ、これレイプされるわ」っていうのが一瞬で感じられるんですよ、でもヤバい奴らはずっとヘラヘラしていて、決定的なシーンにならない。その間ずっと見ている私達は嫌な気持ちなわけで、でもいつ決定的なシーンが来るのかわからないからずっと手に汗握る状態。ここまで嫌なシーンをこれだけショッキングなカットを挟まずに撮れるって、天才ですよ。すごすぎる。

そして、その後妻と娘を発見するのですが、赤いソファーに2人で全裸で抱き合わせられている。それがものすごく静かで、ものすごく美しい。何より、このショットで「死」というものを表現してしまっているような。すごすぎる。

単純にわかりやすいお話ではあるのですが、なんといってもラストの終わり方も素晴らしかった。主人公のスーザンがただひたすらに失ったはずの元旦那を待ち続ける。自分は色々なものを手に入れて、元旦那だけを失くした状態で。でも、旦那は来ないんですよね。

待ち続けるという様子の撮り方も素晴らしくて、ヒキで撮り続けるのですが周りの装飾が結構派手だからそれも相まってすごく寂しい感じが出ていて、かっこよかった。
トムフォードは天才。それだけです。
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