ぬーたん

ノクターナル・アニマルズのぬーたんのレビュー・感想・評価

ノクターナル・アニマルズ(2016年製作の映画)
4.2
これは…凄かった!身の毛がよだつような小説の映像化と、現実の今と過去の絡み。映像の美しさとファッションセンス…なるほど監督はファッションデザイナーとして有名なトム・フォード。グッチやサンローランを経て自らのブランドを立ち上げたファッション業界の天才のようだ。監督としては『シングルマン』はゲイの話で良い作品だった、トム自身もゲイ。
主役のスーザンをエイミー・アダムス。最近では『メッセージ』『バイス』上手いねえ。目で感情を表す、その目が悲しげだったり恐怖に震えたり。この役は感情の揺れを演じるのが難しいが、最後のシーンまで、セリフが無くても彼女の気持ちが理解出来た。
作家で元夫のエドワードにジェイク・ギレンホール。大好きな俳優。彼なしでは考えられないと思う程ハマってたこの役。変わった役、マイナーな作品をわざわざチョイスしているんではないか?と思うほど、個性的な役が続く。『ナイトクローラー』『雨の日は~』『オクジャ』ジェイクが出てるというだけで観たくなる、そんな役者はあまり居ない。この役は小説と本人の2役だが、出番は殆どは小説のトニーの方だ。
出だしからビックリ。太った女性たちが裸で踊っている…。何なんだ?と思ったら主人公のスーザンがアートギャラリーでやっている展示作品の一つみたいだ。ぶるんぶるんとお腹のお肉が震えるほど腰を振る大デブシスターズ!有名な画家の絵がモチーフのよう。
エドワードから送られて来た小説『ノクターナル・アニマルズ』を夜中に読むエイミー。この読んでいるお話が、私たちにリアルな映像として視覚にドンと来るから、その衝撃は半端ないのだ。あくまでフィクションの紙の上の話なのに、こうして映像化することで、残酷で理不尽で、吐き気すらしそうな程の生々しさを感じる。先を観るのが怖くなるがしかしそのスリラー性に観ずにはいられない。そして芸術的な光景からの現実との重なり合いが、その意味するところを教えてくれて、彼の悲しみと心の傷に胸が痛くなる。悲しみ、傷み、愛、復讐、嫉妬、色んな感情が見えて来る。
悪党のリーダー、レイをアーロン・テイラー=ジョンソン。まだ29歳、撮影時は25歳でイケメン。この役にしてはイケメン過ぎるが、ゴールデングローブ助演男優賞を獲った位に好演。本当に嫌なヤツ、だった。私生活では20歳の時に23歳年上の映画監督と結婚、子供も生まれたという。凄いな。やってることもぶっ飛んでてゴールデングローブ賞をあげたい。
アンディーズ警部補をマイケル・シャノン。これまた大好きな俳優。いかにもテキサス野郎というファッション。タフで熱い男、というところも。悪役が多いが『ボードウォーク~』同様、警察側でちょっとまともではない、という役もお得意。怖い顔で声は渋い。アカデミー賞助演男優賞にノミネートされた。
この4人の俳優の素晴らしい演技、とりわけジェイクの小説の方の役は迫真の演技で引き込まれる。
ラストは圧巻だ。お洒落をして大胆な服で、でも口紅を拭って出かけるスーザン。高そうな日本食?のレストラン。
スーザンを捉える遠くからのカメラは、おそらくエドワードの視点か、その気持ちか。
様々な解釈が出来そうな映画は、普段なら面倒な感じで好きではないが、この映画は珍しく自分にドンピシャってハマった。
好き嫌いが分かれそうだけどね。
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