ノクターナル・アニマルズの作品情報・感想・評価

ノクターナル・アニマルズ2016年製作の映画)

Nocturnal Animals

上映日:2017年11月03日

製作国:

上映時間:116分

3.9

あらすじ

スーザンは夫とともに経済的には恵まれながらも心は満たされない生活を送っていた。 ある週末、20年前に離婚した元夫のエドワードから、彼が書いた小説「夜の獣たち(ノクターナル・アニマルズ)」が送られてくる。彼女に捧げられたその小説は暴力的で衝撃的な内容だった。才能のなさや精神的弱さを軽蔑していたはずの元夫の送ってきた小説の中に、それまで触れたことのない非凡な才能を読み取り、再会を望むようになるスー…

スーザンは夫とともに経済的には恵まれながらも心は満たされない生活を送っていた。 ある週末、20年前に離婚した元夫のエドワードから、彼が書いた小説「夜の獣たち(ノクターナル・アニマルズ)」が送られてくる。彼女に捧げられたその小説は暴力的で衝撃的な内容だった。才能のなさや精神的弱さを軽蔑していたはずの元夫の送ってきた小説の中に、それまで触れたことのない非凡な才能を読み取り、再会を望むようになるスーザン。 彼はなぜ小説を送ってきたのか。それはまだ残る愛なのか、それとも復讐なのか――。

「ノクターナル・アニマルズ」に投稿された感想・評価

SyoCINEMA

SyoCINEMAの感想・評価

4.4

このレビューはネタバレを含みます

この映画を認めるのが癪だ。こんなに底意地の悪い映画なのに、こちらの信念を捻じ曲げるくらいの圧倒的なセンスがある。悔しいけど、完敗だ。

本作を観ているとき、2つの感覚を味わった。1つは冒頭の強烈なあのシーン。申し訳ないけど目を背けてしまった。あそこでまず、トム・フォードは「ほら、お前はそういう奴なんだよ」と突きつけてくる。やな奴! でもぐうの音も出ない。

そしてラストシーン。あの解釈は人によって変わると聞いたけど、僕はあくまでシンプルに、ストレートに受け取った。そして、歓喜してしまっている自分を発見した。暗い興奮とでもいうべき、自分自身にある残酷な部分を引きずり出されてしまったのだ。やっぱフォード監督、やな奴!

なんていうかフォード監督は、シェフみたいな人だなと思った。食材は僕たち観客だ。冒頭のシーンでまず皮を剥がれて、心も体も丸裸にされる。
その後は、生きたまんま塩とか胡椒とかを身体にすり込まれて、こっちが悲鳴を上げても淡々と料理を続ける。こっちがどう思うかなんて知ったこっちゃない。彼の頭の中には完璧な設計図があって、僕らはそれを成立させるための具材でしかない。しかも悔しいことに、彼に「使われる」のがだんだん快感になってくる。とんだドS監督だ。本当に、どこを切ってもセンスの塊。

役者陣を見ても、素材として使っている感じがビンビン伝わってくる。あんなに埃っぽい場所で、むせ返るような土臭い演技をマイケル・シャノンが見せているのに、彼と僕らの間にガラスが置かれて隔絶されているみたいに、無機質な美しさは消えない。アーロン・テイラー・ジョンソン演じるサイコパス男も、なんだか遠い。
この感覚は実に上手くて、これがそのまま劇中劇の構造を示している。「これはあくまで本の中の出来事ですよ」と提示しているのだ。さりげなくこういうことをやってくるところが、くそうってなる。エレガントな演出というか。

エイミー・アダムスは、そんなフォード監督の感覚を体現したような完璧な演技を見せている。「メッセージ」の母性を感じさせる演技とはまた違って、完全に鎧で防備した哀しい女性。濃いメイクも、シャープな服も、「私は寝ないの」とか言っちゃうところも全部、内側に入ってこられないようにする武器だ。

だけど、この中で唯一(そこがまたフォード監督の腹立つくらい上手いところなのだけど)生々しさをもって作品世界にいる人物がいる。それが、ジェイク・ギレンホール。彼は劇中で二役を演じているのだけど、そのどちらも意図的にリアリスティックに、もっと端的にいうと庶民的に演じている。そしてフォード監督は、彼だけにはフィルターをかけずにこちらに見せてくる。そこがまたニクい。

僕もものを書く仕事をしているから、ギレンホールの役エドワード(現実の方。過去編に出てくる)には激しく共感した。フォード監督は、他の人物はガラス張りの檻に入れて見せてくるにもかかわらず、ジェイクだけはそのままにしてるから、僕らも飛びつく。勿論、これもフォード監督の綿密な計算によるもので、結局操られているのだけど。。。
ジェイク演じるエドワードがスーザンから言われる言葉は、僕も昔実際に言われたことがある。だからあのシーンで嫌な思い出がフラッシュバックしてメンタルがごっそり削られたし、あのあたりから完全にエドワードに肩入れして見始めたので、ラストシーンでは「イェェェェイ見たかこの野郎!!!」ってなった。

ちょっとここからネタバレを若干含むかもしれないのだけれど、












あのですね、こういう形での復讐はあり得る。本当に。これを言うとアレだけど、男の人はこういう意識ある。スガシカオさんが、昔「俺を振った女からの慰謝料」って売れたことを表現してて激しく共感したけど、20年越しだろうがなんだろうが、多分男の人はこういう復讐をする。
僕が本作を悔しいけど認めたのは、あのシーンに滅茶苦茶共感したから。

だからひょっとしたら、もしあれがフォード監督の本心なのだとしたら、ちょっと分かり合えるかもしれない。「やるよね! わかるよ! 俺もやる!」って思ったもの。

なんだか、冒頭シーンで気分が悪くなってしまって、落ち込んで、調理されたけど、ラストシーンのおかげで非常に爽快な気持ちになったというか。それはそれで、恐ろしい話なのだけれど。
自分という人間のおぞましさみたいなものをたっぷり見せつけられた鑑賞体験でした。
りお

りおの感想・評価

1.5
サスペンスドラマと聞いて鑑賞を決めましたがのっけから刺激が強すぎて序盤で後悔。
監督が有名なファッションデザイナーらしいが、とにかく映像のクセがすごい。
ストーリーはバリキャリの主人公女性が夫とすれ違いの日々を送る中、突然元夫から送られてきた未発表の小説の原稿を夜な夜な読み耽るうちに小説と現実の境目があやふやになっていく、というもの。
この小説のストーリーがこれまた刺激が強く非道な内容で、隣に座っていた女性客はたまらず途中で退出されていました。
現実世界の時間軸(現在パートと過去パートあり)と小説世界の時間軸が予告もなく切り替わり、また、たまにそれぞれの世界や時間軸を越えてリンクするシーンが差し込まれるので、観ている方はまるで主人公と同じように現実と小説の境界線がわからなくなってきます。
元夫が主人公に悪趣味な小説を送りつけてきた目的などを含めこの作品は絶賛されていて、確かにいろんな意味ですごい作品ではありましたが、単純に私の好みではなかったです。
パーソナル・ショッパーの時も感じましたが、ファッション系統のカラーが強い映画はちょっと私には合わないかもです笑
以後、心して鑑賞しよ。
約20年前、現在、その間に小説の映像、3つの視点が複層的にクロスされるのが絶妙。
何度も見返して噛みしめたい映画だった。‬
‪アメリカ南部の話の通じないチンピラというジム・トンプスンの小説ばりの不条理な劇中小説。‬
‪そんな自分の人生の一部と重なっていたほど親しい人が書いた小説を読むうすら怖さ。‬
‪こういう映画はクセになる。‬
書くことで作品に命が吹き込まれ生き続ける……悲しい復讐だった

ジェイク様は本当に憑依型の俳優なんだと思う、気持ち悪くてジメジメしてて、でも切なさを煽るような… 最高に適役でした
Quietboy

Quietboyの感想・評価

4.4
ラスト、めっちゃ味わい深い!
それが正解なのか、なんで来なかったのか
意味とかどうでも良くって、
ああほんとにあの終わり方すごい!

おまえにレイプ犯だと見られたから、ほんとにそうなった
っていうの、責任逃れの言い訳でもなんでもない。
誰か、ましてや愛する人から見られた自分、
それが弱い自分だったら、
ほんとに弱くなっちゃう。

あなたには才能がある!って言ってあげられてたら、ほんとにそうなってたはずなのに…

愛する人のこと、そうさせてしまってたの、自分のせいだって気づいてなかったのかな、

スーザンに捧ぐと宛てられたあの小説、
あの女は、ノクターナルアニマルズ、
そう、妻も娘も奪っていく野蛮な獣。
Shiren

Shirenの感想・評価

4.2
・オープニング映像が反則。夢に出そう。
・主人公の現状、前夫から送られてきた小説を映像化する劇中劇、主人公の回想の再現の3つのパートで構成されるドラマが秀逸。
・主人公が置かれている立場、送られてきた小説の内容と現状パートで登場する娘の描写部分、ラストシーンをどう解釈するかで感想が大きく分かれるタイプの作品。かなり文学的で、鑑賞後暫く余韻に浸れる。おそらく男性と女性では全然違う感想になるだろう。
あきら

あきらの感想・評価

4.5

このレビューはネタバレを含みます

冒頭いきなりパンチ効きすぎてて、これはなんか凄いことになるぞ感あったけど、本当にすごかった!!?


見ただけでハイブランドとわかるこだわり尽くしたインテリアもファッションもすごいし、チリひとつバグを許さない、画面作りが相変わらず完璧。
高級そうなクリスタルに活けられるオレンジのモカラ。エントランスに飾られてたのはオンシジウム だったかな?
蘭の花で統一してある徹底ぶりが見事だった。アートだった。

けどその映像に負けてない構成と心理描写が圧巻。
美しさと悍ましさの対比と共存、無残なはずの母娘の遺体をあんなに美しくするなんて!

こんな復讐の仕方ってあるのか!
こんなにも後引く暴力の表現があるのか!
いや復讐なのかどうかもよくわからないけど。


あれはあくまでも虚構で、エドワードはただ小説を書いただけだ。
なのにとても暴力だった。捨てられた男の胸の嵐に圧倒された。

実に緻密に繊細に描かれた愛とその恐ろしさの話だった。

このレビューはネタバレを含みます

トム・フォードの二作目。前作は(おそらく)本人の経験を基にした作品だったけど、デザイナーらしい美意識を感じさせる美しく調和のとれた映像とトップデザイナーという肩書きなど関係ないぐらい確かな演出力を見せつけた作品だった。

今作でも一級品の演出力とストーリーテイラーとしての才能を見せている。

現代アートなんかの仕事をしているセレブな主人公スーザンの元に昔の旦那エドワードから小説が送られてくる。この小説は残酷で救いがない話だ。善良だが弱い所のある男が不条理にも妻と娘を殺される。男の善良さと弱さはどんどん自体を悪い方悪い方へ転がしていく。
なぜこんな小説を送って来たのか?エドワードもスーザンに“弱い男“と見られ捨てられたからかもしれない。もしかしたら、別れずに結婚してたかもしれない自分たちの物語としてこの小説を書いたのかもしれない。

スーザンとエドワードの過去と小説は微妙にシンクロしながらスーザンに過去を思い出させていく。失敗や後悔。

これはエドワードの復讐だったのか。
わからないところは多いけど、強く印象に残る作品だった。
sariii

sariiiの感想・評価

3.9

このレビューはネタバレを含みます

本物の現代アートの作品が登場すると聞いて期待。実際には15作品ほど登場するらしいが、ジョン・カリン、ウォーホル、クーンズくらいしか気付かなかった。画面で語るとき、作品を引用することでそのシーンにもっとたくさんの意味や意図が示唆できると読んで納得(Viceの記事に詳細あり)。DVDが出るまでに、作品をちゃんと調べてからまた観るのもありだと思った。
(クーンズのバルーンの作品にチェーンが揺れて当たってるシーンは、傷がついちゃうと勝手にヒヤヒヤ)

アーロン演じる主犯役が胸くそ悪いほどハマってた...胸くそ悪くなるってことはリアリティーを感じている証拠?外の便器でう@こしてる姿はあまりにナチュラルだった(笑)
道路で揉めたシーンで、見下された態度を取られたときだけキレるのも、最後に白状したときも、人を殺すに許されない動機だけど、はっきりと理屈はある気がした。

ただ、エイミー演じる主人公は、ここから大きく生まれ変わる可能性は感じなかった。ある意味、もう遅いことを知って終わるエンディングかと。反省して生まれ変わる、万人受けするオチではなく、救いを求めて観る映画じゃない。自分に「間違った選択はしてない」とごまかし続けた結果、それはどこまでも自分を追い続けてくるものなのだ、と私は受け取った。それは社会的な、経済的な成功ではごまかせない、意志やメンタリティーにおいて自分に素直に生きているかという問いにちゃんと向き合ってきたか。そのことから一生逃げ続ける、そういうことって、実際にあると思う。
他人事のようにしか見れない、観者を置いてきぼりにしがちな「生まれ変わるヒーロー物語」とは違うリアリティーを感じさせてくれた。

観終わってからじわじわくるので、またそのうち加筆したい。

トム・フォード監督作品が好きだ。
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