ノクターナル・アニマルズの作品情報・感想・評価

ノクターナル・アニマルズ2016年製作の映画)

Nocturnal Animals

上映日:2017年11月03日

製作国:

上映時間:116分

3.8

あらすじ

「ノクターナル・アニマルズ」に投稿された感想・評価

SyoCINEMA

SyoCINEMAの感想・評価

4.5
この映画を認めるのが癪だ。こんなに底意地の悪い映画なのに、こちらの信念を捻じ曲げるくらいの圧倒的なセンスがある。映画と自分の間に奇妙な愛憎関係がある感じだ。

本作を観ているとき、2つの感覚を味わった。1つは冒頭シーン。とあるアート作品なのだけれど、かなり強烈だ。全く予想していなかった僕は、申し訳ないけど目を背けてしまった。あそこでまず、トム・フォードは「ほら、お前はそういう奴なんだよ」と突きつけてくる。観たくないものから目をそらすようなきれいごと大好き人間なんだと。
実に醜悪で、知的な問いかけ、罠。こちらの準備ができていない段階から音もなく切り込んでくる。この冒頭だけでも非凡なセンスを感じさせる。

そしてラストシーン。公開当時、あの解釈は人によって変わると聞いたけれど、僕はあくまでシンプルに、ストレートに受け取った。そして、歓喜してしまっている自分を発見した。暗い興奮とでもいうべき、自分自身にある残酷な部分を引きずり出されてしまったのだ。
そして、はっと気づいた。あぁ、自分はこういう人間なんだって。自分の本性とでもいうべきものが、冒頭と末尾にそれぞれえぐりだされる構成になっている。

本作を観て、フォード監督はシェフみたいな人だなと思った。食材は僕たち観客だ。冒頭のシーンでまず皮を剥がれて、心も体も丸裸にされる。
その後は、生きたまんま塩や胡椒を身体にすり込まれて、こっちが悲鳴を上げても淡々と料理を続ける。こっちがどう思うかなんて知ったこっちゃない。彼の頭の中には完璧な設計図があって、僕らはそれを成立させるための「具材」でしかない。しかも悔しいことに、彼に「使われる」のがだんだん快感になってくる。
例えばハネケ作品や、「ザ・スクエア」と近いのかというと、それもまた違う。彼らの作品には人間不信(或いは逆説的な人間性への渇望)が潜んでいるけれど、本作は人間自体に興味がないという感じだ。というよりも、人間が服を着るため、物語を展開させるための土台、マネキン的な扱いになっている。このあたりは、モードの世界で生きるフォード監督ならではの感性と言えるだろう。

この、人間に対する独自の目線は、役者陣を見ても、よくわかる。あくまで「素材」として使っているのだ。
本作では、無機質な現代と、土臭い物語の中の世界が対比して描かれる。ただそのどちらにも、フォード監督のある種機械的な目線は共通している。
あんなに埃っぽい場所で、むせ返るような泥臭い演技をマイケル・シャノンが見せているのに、彼と僕らの間にガラスが置かれて隔絶されているように、無機質な美しさは消えない。アーロン・テイラー・ジョンソン演じるサイコパスも、なんだか遠い。
この距離感が、本作のアクセントになっていて、泥だらけ傷だらけになっても、それらを展示物として観ている感覚になる。そしてそれはそのまま、元夫が書いた小説を読むヒロインの姿と重なる。

つまり、映画と観客の距離感が、そのまま「元夫の書いた物語の中の世界と、それを読むヒロイン」の関係性になっているのだ。このあたりを体感させるというのも、実にエレガントな演出だし、本作の構造的な面白さの1つ。

エイミー・アダムスは、そんなフォード監督の感覚を体現したような完璧な演技を見せている。「メッセージ」の母性を感じさせる演技とはまた違って、完全に鎧で防備した哀しい女性。濃いメイクも、シャープな服も、「私は寝ないの」と言ってしまうところも全部、内側に入ってこられないようにする武器だ。

だけれど、この中で唯一(そこがまたフォード監督の腹立つくらい上手いところなのだけど)生々しさをもって作品世界にいる人物がいる。それが、ジェイク・ギレンホール。彼は劇中で二役を演じているのだけど、そのどちらも意図的にリアリスティックに、もっと端的にいうと庶民的に演じている。そしてフォード監督は、彼だけにはフィルターをかけずにこちらに見せてくる。
役者にはそれぞれ役割が与えられていて、フォード監督は彼らの素晴らしい演技をフィルターを掛けたりガラスに包んだりしている。でもジェイクだけは、究極的に「生」で見せる。そうすると観客はやっぱり共感してしまう。ただ、これも全部フォード監督の狙い通りなのだけれど。

この映画を観ている時に僕らが感じることは全部、監督によって筋道がつけられたものをなぞっているだけだ。でもそれは退屈ではなく、能動的に映画を観るのが好きな人でも、こういう風に操られることが快感になっていくだろう。ちょっと催眠的というか、中毒性がある。それは画面的な美しさもあると思う。

物語としての面白さはもとより、トム・フォードというクリエイターの特異性が詰まった作品。他の映画では、なかなか得られない経験ができると思う。
よしや

よしやの感想・評価

3.5
現実世界と作中小説の世界を描き分けマインドを表現したストーリーや俳優陣の真に迫る演技は素晴らしかった。

小説内世界である西部劇的な復讐のバイオレンスストーリーは序盤は起きて欲しくない暴力をこれでもかも見せてきて本当にワクワクした。

俳優陣の白熱の演技は重厚で現実世界の内容とのリンクもあり、特に復讐というより大切なものを手放した自分への不甲斐なさへの憤りを感じ雄叫びをあげるシーンは素晴らしかった。

しかし小説と現実が溶け込み曖昧になるというより現実世界で過去に起きた事柄が精神的に小説内に反映させているにすぎず、やや物足りない。復讐ストーリー自体も捻りがなくシンプル。

この劇中内小説は非常に多くのパートをしめていたけれど、それが正しい判断だったのかは疑問だった。

現実世界におけるエイミー・アダムズの鋭い演技はもちろんのことトム・フォード監督らしい非常にビジュアルにすぐれた美術や演出が素晴らしく、もっと観たかったし、正直こちらがメインで観たかった。

オフィスの壁紙が真っ赤に表される色使い、邸宅やレストランの空間を感じる美、水の表現のキレと鮮やかさなどは本当に良かった、それだけに作中作である殺風景な荒野の復讐劇は後半の捻りも少ないし、ここまで尺を取る必要性があったのか考える。

作中作と現実のリンクによりテーマは明確化されラストにも綺麗に繋がり作品としては文句の少ない出来にはなっているがもっとトム・フォードらしい美が観たい、そう思わされた。
オープニングが史上最狂…。
超絶太っちょおばさん達が素っ裸で踊ってるのを3分間ひたすら見せられて頭おかしくなりそうだったw
kny

knyの感想・評価

3.6
エイミーアダムスが痛い女性に見えちゃうな
SIPHON

SIPHONの感想・評価

4.0
何もかも手に入れたようでいて、すべて失っていたと気づかされるラストが秀逸。
映像はとにかく美しい。昔の映画のようなテーマ曲も美しくて好き。トム・フォード監督は音楽の使い方が素敵でうるさくないのが良い。小説は最初エドの実体験?と思ったが、過去の仕打ちを比喩的に表現したものの様子。主人公と主犯格はどちらもエド自身なのかな。実際のところ、小説のシーンを抜かせばスーザンが元夫の小説読んで過去を振り返っているだけなのに、こんな深みが出るとは驚く。ただ、映画のストーリーとしては素晴らしいけれど……

現実には、20年前のことをいまだに恨みに思ってたわけ?器小さいね?別れて正解じゃない?なるほど、あなたはコレがしたかったわけね、あぁそう、失ったものは戻らない?そんなの知ってたわよって口紅ひきなおして小説ゴミ箱にポイするのが「女」じゃないかなーと思いました。トム・フォード監督、ロマンチストだなーと思いました。
A

Aの感想・評価

-
"この映画は、人生の中で私達がなす選択がもたらす結果。そしてそれを諦めてしまうことへの警告の物語"
あぷ

あぷの感想・評価

3.8
冒頭の踊る太った全裸の女だとが、闇深くアーティスティックな風景カットがやけに印象的だと思ったら、監督のトム・フォードはファッションデザイナーでもあるわけか。納得。

目まぐるしく行き来する現在と過去、そして小説の世界に集中力が切らせない。
さりげなくあらゆる場面に散りばめられた暗示も見事。

複雑かつ強烈な余韻を残す結末をどう解釈をするか?

観る者に様々な解釈を委ね、もう一度観直したくなる紛れもない傑作。
依緒

依緒の感想・評価

2.5
オープニングに圧倒された。
女性の強い意志と自由を感じさせる。
それは主人公の心情を表しているよう。
後悔は先に立たず。
自分の決めた道に後悔してはいけない。でももしあの時……

同じくギレンホール演じる元夫は、現実と思い出と小説の世界を演じ分け、複雑な彼の心を見事に表していた。

過去と現在と小説の世界の色彩を変えることで、観ている私達が混乱しないよう、けれど混乱しないような素晴らしい演出だった。
うみ

うみの感想・評価

3.3
構成は面白いけど示唆があからさまな割に分かりづらい
そのせいかもしれないけど理由のわからない表現がいくつかあって、解釈の余地はあるのかもと思った
>|