ほどよく長回しされるざらついたモノクロの風景。冒頭からもう好み。
父親の影を追うように映画製作を続ける愛を語らない夫と、自分の夢をあきらめ献身的に夫の夢を支える妻。
彼らの暮らしがバランスを崩し傾いていくにつれ、愛を失いかけて気づくものと失ってみてから気づくものとの立場が反転していく。
お互いがお互いを必要としなくなるまで手探りの愛を探し続ける妻が健気で可愛い。
裏面性を多面的に見るのではなくてその一面性をじっくりと映しだすシンプルな映像と、随所に差し込まれる心の声が無機質なのに詩的で心に響く。