てれ

愛しき人のてれのレビュー・感想・評価

愛しき人(2007年製作の映画)
4.7
Netflixでありがたいことに復活配信。
ランビール・カプールとソーナム・カプールのダブルデビュー作にしてバンサーリー監督作品なのでずっと観たかったやつ。ランビールは「バルフィ!」も含めると、デビュー初期は心がキレイな青年役がハマり役だったんだなと思う。

原作はドストエフスキーの「白夜」
青色をベースに作り込んだ世界観がかなりファンタジック。西洋風の建物とイスラミックな建物が入り乱れる街が異世界っぽい。
ランビール演じる主人公ラージはまさに無垢という言葉が似合う青年。人の懐にすぐに入る温かさと明るさがあって愛らしい。ソーナム演じる絨毯職人の娘サキーナに一目惚れして、純粋に彼女を想う姿が少し幼げ。
そしてサキーナが漂わせる哀しげな美しさと、眩しくも儚そうな笑顔が強く印象に残る。これは初々しいソーナムだからこそ出せた雰囲気なのかもしれない。
あくまでも原作通りなので、一見サキーナがひどく見えてしまうかも。ただ原作を読了した観点から言うと映画の方には救いがあったと思う。

バンサーリー監督作品のよくある評価で「ストーリー性がない」「現代にそぐわない」というものがかなり多い。確かに耽美主義を追求した結果ゆえにそうなってしまっているのは否めない。
しかしそれ以上にバンサーリー監督は、役者の表情を鮮やかに映し出して効果的に見せる撮り方を熟知していると私は思う。この映画ではラージの痛々しい健気さだったり、サキーナの盲目的な恋ゆえの狂気だったり。それはとても胸に迫るものだった。

あと、他のバンサーリー監督作品よりも音楽が多くミュージカル色が一段と強かったのも特徴的だった。ラージがサキーナに一目惚れするMaashallahは柔らかみがあり、イード祭りのシーンYoon Shabnamiはカッワーリー風の音楽が圧巻。彼の作品を観ると、映画は総合芸術なんだとつくづく再認識させられる。

という具合に、私はバンサーリーワールドの住人なので高評価をつけてしまいがち。彼の作風は好き嫌いハッキリ分かれると思いますが、私は超大好きです。
ネタバレはコメント欄に。
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