Yuuka

ストーンウォールのYuukaのネタバレレビュー・内容・結末

ストーンウォール(2015年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

試写会にて鑑賞

(あらすじ)
舞台は1969年のニューヨーク。
まだセクシャルマイノリティーが世間から迫害を受けることが当然とされていた時代。

閉鎖的な田舎町に住む高校生のダニーは、幼なじみの男友達と夜中に密会をしていた。
車の中にいた2人を脅かそうとした友人により、2人の関係が明らかになり学校中の噂になってしまう。
そこで、もともとゲイなのではないかと疑惑を持っていた教師をしているダニー父親は2人を1人ずつ呼び出す。

そこで、ダニーは幼なじみが「ダニーが自分を酔わせてお酒で判断力を失わせ誘ってきた」と全ての罪をダニーに押し付けたことを知る。
厳格で同性愛を激しく嫌忌している父親の前で、震えるダニー
「お前は治療が必要だ。助けてくださいと言え。このチャンスは一度だけだ。言え。」と怒鳴る父親であったが、ダニーは部屋を飛び出し家に帰る
部屋に戻るとキャリーケースに自分の荷物が全て詰められており、ボディビルダー雑誌までも丁寧に並べてあった。

両親の自分へのおもいを悟ったダニーは仲が良く唯一理解のある妹に後ろ髪を引かれながら出て行ってしまう。

セクシャルマイノリティーたちが集まる場所、ニューヨークのクリストファーストリートで友人となる男娼をして暮らしている貧しいゲイのレイと出会い居場所を見つける。

(感想)

今ではセクシャルマイノリティーの人々が、社会的な権利を当然持っており、同性婚をし家庭を持つことも珍しくないが、1969年、この時代は同性愛はおろか、働くこと、居住することすら許されていなかったのだということを再認識した。では、彼らはどうやって生きていけというのか?社会は彼らを見捨て、それだけでなく、排斥しようとした。
恋愛対象が自分と違う、マイノリティーであるということだけで排斥するというこの時代の流れ。短絡的すぎるこの考えが数十年まえまで当たり前のようにあったのかと思うと恐ろしく、そして映画のラストで現在でも同性愛が罰せられている国が多数あると知り、驚く。

レイ達の帰る場所も行く場所もない。ここで男娼をして、時に暴力を受け、人権がないに等しい毎日を貧しく生きて行くしかないという状況下で明るく、プライドを持ちながらも、自分を否定せず生きていく姿がまぶしかった。

ストーンウォールインで起こった暴動、ストーンウォール事件の暴動シーンで
彼らは明日もあるかわからない、失うものが一つもない中で、暴力で訴えるしか、行き場のない怒りや憤り悲しみを成就させられないのだと、そうさせた世界への怒り悔しさ、彼らの想像し難いどうしようもない感情に涙した。

レイの素直になれないが、優しく暖かい性格や、ダニーへの遠回りな愛情、計り知れない孤独感を抱えながら明るく仲間と過ごす姿が素晴らしかった。

レイ役のジョニーボーシャンはどうみても本当のレイにしか見えなかった。美しくて、強いけれど今にも壊れてしまいそうなほど脆い一面を持つ1人の人間だった。

実際のストーンウォール事件では誰が暴動を始めたのか分かっていない。実在した人物も映画で登場したが、レイやダニー達は架空の人物。けれど、名前も残らない彼らの勇気から本当に世界は変わった。あの日の1人がいたから、現在の彼らのような人々に生きる権利を与えた。

賛否両論ある映画だけれど、人種がどうということではなく
そこにいた彼らの気持ちが忠実に再現されていたように感じる。

こんなに全てが揃っていて、安心して眠る場所がある私たちよりも本気でぶつかり合い、全力で愛情を求め合う彼らの方が輝いて見えた。
Yuuka

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