カント

ハッピーエンドの選び方のカントのレビュー・感想・評価

ハッピーエンドの選び方(2014年製作の映画)
4.5
イスラエル映画。
老人ホームの人々を描くヒューマン・ドラマの傑作☆
安楽死(尊厳死)は殺人か愛の所業か、魂の救済か。鑑賞者により意見が別れる事でしょう。

ほのかにコメディ色も有ったり、ちょっぴりミュージカル・パートも有ったり、死を扱う映画なのに、きっちりエンタメしています。

✏アフバト・バティキーム老人ホーム。
発明家ヨヘスケルは、友達のゼルダの為に【神様と話せる電話】を発明。エコーをガッチリ効かせた受話器で神様のフリをしてゼルダを励ますヨヘスケル。

親友のマックスは末期患者で毎夜、苦しむ。マックスの妻ヤナは、これ以上マックスの苦しむ姿を見ていられない。
そこで獣医のダニエルと発明家ヨヘスケルは考えた。自分の意志で!指1本で!永遠の眠りを得るマシーン。
スイッチを押すだけで点滴に麻酔薬が投与されて気持ち良く眠った後に塩化カリウムが投与される安楽死装置!!
いざ実行。マックスの安らかな寝顔。妻ヤナは、静かに涙して感謝する。

墓場で出会うドゥベク氏。奥さんの
クララは末期ガンで痛み止めの薬も効かなくなった、と。
例の発明品の噂を聞きつけて、ヨヘスケルに懇願する。
「妻を…救ってくれ」

発明家ヨヘスケルの妻レバーナは一連の、夫ヨヘスケル達の行いに「殺人よ!」と猛反発!
同時に…妻レバーナには認知症の兆候が出始めていた。老人ホームの食堂を素っ裸で歩くレバーナ。
孫に焼いたクッキーの事も忘れて残飯を漁るレバーナ。自分が自分で居られなくなる恐怖。
ヨヘスケルは…妻レバーナが“望む事”に反して、安楽死マシーンをぶっ壊すのだけれど…。

昨今は、自分自身が『老いていく』事を想像できない人が多い…と思います。老いた父母だけの問題じゃなくて、いずれは自分に降りかかる事。
老いによる、また病による、避けられない肉体的苦痛。生の苦痛。
このイスラエルの映画が一考の一助になるかも。
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