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天空の城ラピュタのレンタルショップ店長Mのレビュー・感想・評価

天空の城ラピュタ(1986年製作の映画)
4.5
「観てくれる子供の事を常に考えて映画を作っている」とは宮崎駿監督の談。

自分もそれなりに歳を重ねた今、この映画は主人公パズーを巡る『親と子』の物語であったと感じる。

親方、ドーラ、故人である実の父親。

パズーの保護者としての役割を担った人物は作中に三名いて、それぞれ役割の違う『子供の成長のために、周りにいるべき大人』として描かれていたと思う。


ラピュタ到着直前、嵐の積乱雲の中で亡き父親の幻と出会うシーンは個人的には映画史上屈指の好演出。パズーの、父親に対する全ての想いを数秒間で表現している。パズーが何と叫んだか分からないのが実に上手い。

『生きている者へ受け継がれる、死んでいった者の遺志』の描き方が宮崎監督は抜群に上手いが、監督自身が子供時代を戦時中に過ごした事が大いに関係している様に思う。


これらの『親たち』に支えられ辿りついた運命の地ラピュタは、少年にとっては父の無念を晴らせる証明であり、少女にとっては自らのルーツである訳だが、それさえも正しい価値観の元で『バルス』してしまえる。

ここに宮崎監督が込めた子供達への『希望』と、それを支えるべき周りの大人達への『要望』があった様に思う。


公開から30年近く経った今もこの作品を目にする機会は多い。振り返ってみて・周りを見回してみて、自分がどんな子供であったか、そしてどんな大人になったかをその度考える。