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20センチュリー・ウーマンのbluemomday0105のレビュー・感想・評価

20センチュリー・ウーマン(2016年製作の映画)
3.8
1979年。グレートアメリカがグレートでなくなった、終わりの始まりの年。新たなカルチャーや価値観がボコボコ生まれてきた時代の、決して都会ではない街に住む母と子と、幼なじみと2人の同居人との話。
大層なことは起こらないけど、映画のひとつひとつを手に取りたい、大切にしたいと思える映画でした。

15歳の少年、17歳の幼なじみの美少女、25歳のアーティスト、55歳の母親。誰の目線で見るかによって感想変わりそうかな。
私は母ではないけど、年齢的に一番近い母親の抱く「女としての不安」に日々苛まれているから、彼女がどこで傷ついてるのか分かってしまってなかなか辛いなと。劇中出てくる「女性の加齢」についての本の文章が刺さりすぎた…
歳をとる度に、誰にも気に止められない存在になっているような怖さ=透明人間との比喩がもう。
序盤の車が炎上するシーン、息子ジェイミーの「もう古いから」って言葉に「新しい時代もあった」って返したのは、車だけの話じゃないのだろう。

あのお母さんは立派に自立してるし、理解もユーモアもあるし株の見方も教えてくれて申し分ないのに、それでも息子の子育てに悩んでしまう辺りに「子育ては難しいな…」としみじみ感じた。精一杯気にかけてるのに、そんな気持ちも知らずクラブではじける息子の写真を見て「こんな顔するの知らない」て反応しちゃうよね。思春期の息子の「理解されてたまるか」みたいな気持ちもわかるのだけど。

幼なじみの美少女ジュリーも、ジェイミーにパンクやフェミニズムを教える女性カメラマンのアビーも素敵な女の子。
ジュリー役のエル・ファニングは美しすぎて、横たわる姿はもはや発光してる勢い。なかなか大変な挫折を味わいながらも、デヴィッド・ボウイの「地球に落ちてきた男」を観て髪を赤く染め出したアビーのパンキッシュなキャラもいい。

監督のマイク・ミルズの母親がモデルで、ジェイミーにも己を投影してるらしい。
マイク・ミルズはソニックユースのアートワークも手がけ、X-GIRLにも関わっていたけれど、こんな風にフェミニズムの薫陶を受けてきたなら、キム・ゴードンら90年代の女性アーティストともうまくやってこれたはずだわと。日本なんて21世紀になっても、処女喪失時の出血と生理の区別がつかない男性がいるらしいんだぜ…!

当時のパンク/ニューウェーブがかかりまくりなのも盛り上がりました。トーキングヘッズのファンと、ブラック・フラッグのファンが仲悪いとか初めて知った!
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