物語的にはチープだし、推進力もないし、意味のないイメージ映像がひたすら続く。映像的にも「スワロウテイル」をベースに、クリストファーノーランをはじめとするハリウッド映画、あるいは三池崇史や原田眞人のVシネシリーズといった撮り方や雰囲気を模倣しパッチワークしたものにも見えてしまう。
だが、これだけははっきりとしている。久々にワクワクするような才能を持つ若手映画監督が現れたと。音楽と映像への執拗なこだわり。確かに映画で一番大切であり気持ちのいい要素であり、不思議と感情が揺さぶられ、映画的な推進力はそこから生み出される。明らかに背伸びをしてスケール感を出してはいるが、その背伸びを最後まで貫き通しているその胆力、地足の強さは圧巻。
オリジナリティの域には達していないが、それでも俺はこれが好きだからとことん撮ってやるといった作り手の気概がビシビシ感じられる、目の覚めるような快作。次回作が本当に楽しみだ。