天馬トビオ

青い山脈の天馬トビオのレビュー・感想・評価

青い山脈(1949年製作の映画)
3.5
このレビューは、本作に加えて、同年に公開された続編『続・青い山脈』2本を併せてのものになります。

地元ボスが牛耳る地方都市。古い因習にとらわれ、閉塞感に満ちたこの小さな町にある高校も、策謀をめぐらす教頭とその腰巾着が、日和見な校長を差し置いて実質支配しています。もちろん生徒たちも無気力で何のモチベーションもないその日暮らし。そんな町にやってきた、開明的で民主的な考えを持つ聡明な教師が、生徒たちの意識を変え、大人たちを縛り付ける頑迷な鎖を断ち切り、やがては町の雰囲気までを変えていく……。

「♫古い上衣よさようなら、淋しい夢よさようなら」

美人で聡明、正しいと思うことを揺るぎない信念で実行していく女教師。彼女を支える同僚医師。変わり者だけど真っ直ぐな心を持っている女子高生。コメディーリリーフのお茶目な同級生。粗野だけど純粋なバンカラ男子高校生たち。

「♬旅をゆく、若いわれらに鐘が鳴る」

もちろん長い間続いた生活や人々の意識が一朝一夕にころっと変わることはないでしょう。女教師に恋心をいだき援護射撃する同僚医師ですら、平気で男尊女卑の封建的発言をします。しかし、サイクリングする彼ら、彼女らの明るく朗らかで健康的な姿に、当時の観客は敗戦後の日本が希求してやまない民主的で自由な新しい時代の訪れを垣間見たことでしょう。

やがてこの映画のモチーフは、多少のディテールの変更はあるものの、60年代末から70年代にかけて一世を風靡した学園青春ドラマに受け継がれていきます。時代の流れとともに表立った民主主義礼賛は影を潜め、スポーツと恋愛に比重が置かれるようになり、それも対象世代が中学校・小学校に移っていくにつれてより社会的な問題を扱うようになっていきました。息の長い学園青春ドラマは、今でもテレビドラマの重要な一ジャンルとなっているのはご存知のとおりです。

ちなみに、そうした学園青春ドラマの一作の主題歌を歌ったのは、「青い山脈」ならぬ「青い三角定規」でした。
天馬トビオ

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