爆裂BOX

ハーモニー・オブ・ザ・デッドの爆裂BOXのレビュー・感想・評価

4.9
ゾンビパンデミックから9年後、雪深い町ハーモニーで暮らすジャックと娘ルー、隣人のパトリック。ジャックとパトリックの間には深い溝ができ対立していた。だが、彼らの前に絶滅したはずのゾンビが現れ…というストーリー。
「スペイン一家監禁事件」「インサイド」のミゲル・アンヘル・ビハス監督のゾンビ映画です。
「アイ・アム・レジェンド」の様にゾンビアポカリプス後の世界を舞台にした人間ドラマの趣の強い作品になっています。パンデミック初期を描く冒頭こそ普段のゾンビ映画の様にゾンビ大暴れのパニックが描かれますが、そこから9年後の世界で娘と暮らす父親とすぐ隣に居ながら全く接触なく「地球最後の男」状態の隣人男性のドラマがメインに描かれます。この父親と隣人の仲が尋常じゃなく悪く、娘のルーと喋ってるのを見ただけで銃突きつけて怒鳴ったり、ゾンビに襲われてるのを見殺しにしたりします。何故、この二人が険悪な関係になったのか等もヒント小出しにしながら描かれます。事情が分かると「成程ねぇ…と思いますが、余りに一方的に過剰に敵意むき出しにするので父親ジャックにイラつく人多いかもしれませんね。この二人がルーによって徐々に和解し、そしてゾンビの襲撃によって協力する姿は中々楽しめました。マシュー・フォックスとジェフリー・ドノヴァンという其々海外ドラマで主演はってた二人だけにその演技力もあって物語に引き込まれます。ルー役のクイン・マッコルガンも二人に負けない演技力を披露してくれましたね。
パトリックが無線で他の生存者に呼び掛けたり、犬が登場する所は「アイ・アム・レジェンド」や「地球最後の男」っぽかったです。
ゾンビは冒頭こそ何時ものダッシュゾンビですが、中盤から登場する寒さに適応した進化系ゾンビは「ディセント」の地底人の様な全身真っ白の姿で、視力がなく聴覚が発達し、何と感染性もないです。もうゾンビとは別種の怪物ですが、このゾンビ達が大挙して一軒家に押し寄せる後半の緊迫感に満ちた籠城戦は「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」の影響強く感じさせますね。カメラが最上階から地下まで其々の戦いを映しながら降りていく映像が印象的です。
最後のパトリックの決断は父親の責任と役目から一回逃げた男がその責任としっかり向き合ってケジメをつけたように感じられてグッときましたね。夜明けを迎えて終わるラストは「ゾンビ」っぽいです。
ドラマ性が強いゾンビ映画ですが、オブ・ザ・デッド作品の中では間違いなく当りに入ると思います。原作もあるみたいでそっちも読んでみたいですね(日本に入ってこないかな)