通りすがりの旅芸人

レディ・バードの通りすがりの旅芸人のネタバレレビュー・内容・結末

レディ・バード(2017年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

 田舎から都会に上京した人(特に親に反対されながら)、もしくはそういう家族をもつ人には特にたまらない映画かも。

 思春期から大人に向かう少女の日常を、少女のまわりの人も含めていきいきと描いた傑作!
 主演の女優とその母親がすばらしい、調べてみたら「ブルックリン」の主演女優シアーシャ・ローナンが主演なんですね。
 こちらも人生の逆転をねらってアイルランドからニューヨークに単独で渡る女性の物語。母親との確執の描かれ方も似ていて、あわせてぜひみてほしい。

 とにかく、親に愛されてない、こんなところ(実家、故郷)出てやる!と思春期を拗らせていた全ての人にみてほしい。

 クリスティンは、めっちゃキリスト信者っぽい自分の名前が大嫌い、カトリックの価値観も嫌い。だから自分で「レディバード」という名前をつけて、まわりにもそう呼べと強制する

えーと、レディバードってクールな名前なんだろうか(笑)この辺が彼女の残念なとこです。

生活しているサクラメントも、西海岸も大嫌い。ニューヨークにいけば、おされで文化的な生活ができると信じてる。経済的な理由と心配性から、娘を西海岸、地元の大学に通わせたい母親とは激しく衝突する
 そのくせ大好きな曲はヒットチャートのトップ曲(つまりサブカル好きからするとダサい)
 
お母さん、私のことなんて嫌いなんだ

実はレディバードの母親はアルコール中毒の親に育てられ、満足な愛情も教育もうけられなかった。リストラされた年上の夫の分も稼がなきゃ、と連日夜勤もこなすほど身を粉にして働いているから余裕がない。愛情を素直に表現できないところは、レディバードそっくり。つまり似た者母娘だったりするところが面白い

 サクラメントの中で、レディバードは自分の暮らすところを“スラム”という。優しいけど、鬱をわずらう父親が運転する車で毎朝学校に送ってもらうけど、ぼろいクルマがはずかしいから手前で下ろしてもらう。お父さんがそのことでどれだけ傷ついているかもしらずに。

 レディバードのとんがった言動は知らずにまわりのひとを傷つけている。本人が、そこに無自覚
優しい太っちょの親友、悪行を大目にみてくれるシスター、実はゲイだったボーイフレンドも


 レディバードは背伸びして、金持ちの友人や彼氏と付き合う。彼らとつるめば、自分も素敵になれるという思い込みが痛々しい。彼らに影で笑われているのにも気づかずに

 ラスト、レディバードは自分がこれまで忌み嫌っていたものが、どれだけいとおしいものだったのか気づきます。
というか、ニューヨークに上京してすぐ気がつくのはすごい。元来ととても素直な女の子なんでしょうね。
わたしなんて40手前になってようやく故郷のよさがわかりましたから(笑)