カツマ

レディ・バードのカツマのレビュー・感想・評価

レディ・バード(2017年製作の映画)
4.8
きっと誰もがレディバードだった。今思うと恥ずかしくて死にたくなるくらいなのに、あの頃は生きることに必死だった。あの日の自分は友達に大好きだと伝えられていたかな?両親にありがとうと面と向かって言えていたかな?この映画には簡単なことなのに伝えられないたくさんの想いが、言葉が詰まっていた。少しはスピードを緩めて、ほら、全力疾走だと疲れてしまうよ。きっとみんながみんな、疲れを知らずに走り続けて、走り疲れた頃にやっと大人になっていく。レディバードはそんな、闇の向こうに手を伸ばそうと全力で走り続けた思い出の中の優しい1ページだった。

サクラメントの片田舎の高校に通うクリスティンは自らを『レディバード』と呼ぶちょっと痛めの女の子。母親とは事あるごとに喧嘩しているが、高校では親友のジェーンがいるので家よりはマシだ。
レディバードは授業の一環として勧められた演劇で好青年のダニーと出会い、一気に花開く毎日。家族と過ごすよりも彼氏の家族と感謝祭を過ごし、レディバードはリア充なはずだった。なのにダニーが男友達とキスしている現場を目撃してしまい、母親に泣き言を言って慰めてもらうレディバードなのであった。

サラサラと流れていく音楽に身を任せながら、レディバードを体現するシアーシャ・ローナンの演技は本当に素晴らしくて、彼女の表情はシーンが変わるごとに豊かな彩りで光り輝いていた。素直になれないあの想いをこんなにも鮮やかに映像化できるだなんて、グレタ・ガーウィグの監督としての才能に惚れ惚れさせられた。

闇の中だと思っていたあの頃。そこは振り返ってみれば鈍い光を放ちながら優しい彩りで輝いてる。あの宝石のような時をきっと忘れないように、誰もが大人になって本当の翼を手に入れることができるように、あの頃の全てにありがとうと伝えたくなる。戻らない、一瞬の光のようだからこそ、その眩しさにこんなにも想いを馳せる。