Hally

レディ・バードのHallyのレビュー・感想・評価

レディ・バード(2017年製作の映画)
4.2
"あの時代"の話。
私にとっては"今も"な話。

大人と子供の狭間。愛して欲しくて、愛したくて。だけど愛し方、愛され方が分からない。全然上手くいかない。何かを成し遂げたいけどその"何か"が見えなくて。その"何か"が正しいのかなんて死んでも分からないんでしょ。それはなんとなく理解してる。だから迷って、間違えて、苦しむ。先が見えない中で手探りに動かなきゃいけない状態に困惑しながら。人は手探りで生き続け、そして死ぬまで繰り返すんだろうけど"あの時代"はまだ下手くそなんだ。大人は皆、"その時代"の苦しみを忘れがち。『ブレックファスト・クラブ』の"大人になると心が死ぬの、私は嫌"の台詞が正になんだ。だからこそ"青春映画"は世代を超えて喜怒哀楽して楽しめるんだと思う。狭間の者は強烈に共感し、大人は懐かしみ、思い出す。

狭間で苦しむ者は背伸びをする事によって苦しみから解放されようとする。私はそれを"儀式"的な行為と呼ぶ。エロ本、タバコ、恋、SEX、酒。あぁもう最高。結局 これが1番 心の中が垣間見える、もしくは心を開くことが出来るんだ。大人になって行うのとは訳が違う。夢に描いた様な童貞、処女喪失なんて中々ないんだろう。あると思って必死に生きて、やっと…。なのに心が喪失感に襲われる。それが直後、もしくは後に。タバコなんて美味しくない。酒だってそんなに…。特に日本酒とかね。だけどそれで心が開く気がして、光が見える気がするんだ。私はそれを成長、経験と呼びたい。そういう行為は総じて"いけないこと"なんだけどね。私にとっては強烈な憧れ。多分、"アメリカってこんな感じなんだ"って思う人がいるだろう。特に日本人は。人によっては確かに差はあるけど、これは私たちの国もですよ。

シアーシャ・ローナン、ルーカス・ヘッジ、ティモシー・シャラメ。次世代の枠を越えた、この3人は総じて最高だ。でもこの映画で1番凄いのはお母さん。多分、親世代の方が見れば私よりももっと凄いと感じるんだろう。"あの時代"の親は私のことを嫌ってる、怒りたいだけ、八つ当たりしてるだけ、抑圧したい、支配したいだけに感じる。私自身何度も思った事があるし、今でもたまに思う。難しいよ。これが"愛"だと苦しみの中の私たちには気付きにくい。だからこその劇中のシスターの言葉なんだよね。親の気持ちが完璧に理解して共感できるほど立派に育っている自信はないけど、空港で娘に意地を張り一回は走り出すんだけど、泣きながら…のシーンは分かる気がした。結局 間に合わないところにリアルを感じた。意地の張り合いって結局親が勝つんだよね。手紙だってそう。言葉にすると伝わらなそうだから、文字にしようとするけどまたそれはそれで。結局書けない。親になったら更に分かるのかな。

羽ばたいたと思ったら、また…。そうなんだよ。大学に入学すれば変わると思ってた。変わる奴も沢山いる。だけどそう上手くいかない…。

だから私にとってこれは"今も"な話。
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