Yoko

レディ・バードのYokoのレビュー・感想・評価

レディ・バード(2017年製作の映画)
4.6
カリフォルニアのサクラメントに住む女子高生”クリスティン”。
自身を”レディ・バード”と称する彼女にとって地元の街は窮屈であり、彼女は刺激に満ちたNYの大学を志望していた…。


主人公の成長を軸にした青春映画の側面としても最高ありながら、家族、親友、恋人、学校の神父様etc…最小限に切りつめながらも強烈なインパクトを与えるそれぞれの物語がじわじわと余韻を残す。

まず主人公とカーヴィーな親友の野暮ったいスクールガール感が良い。
特別美しいとかまた別に不細工というわけでもないこのリアルな風貌と会話。
基本的な生き方は不器用なのだけど、自身の自己実現のためには人間関係を再構築する、いわばクラス内のコミュニティを渡り鳥のように移動する大胆さも持ち合わせる。
この等身大な人物の描き方に一切誇張や欺瞞を感じない。

また、恋をしていた親友とくたびれた神父との短い会話。
「互いの了解」をほんの一瞬の時間で満たすセンスには脱帽。

とりわけ、進学といった人生の大事な通過点になる「重い話題」になると衝突しあうも、ファッションや歌謡曲のことなど「軽い話題」では意気投合をする母娘関係の絶妙なバランスたるや。
親子に限らずあまり好ましくない人とも、自身と共通の趣味を見つけるとその点においては意外に気が合うことって結構あるよなと考えさせられる。
お互いに気を遣いあうからこそ衝突してしまう母娘とちょっと離れた位置で二人を見守る父、この三人の顛末には泣かされてしまった。
そこに加わるジョン・ブライオンの切なくも壮大な旋律。
いやーまいりました…。

普段見慣れた光景の中にあるからこそそう簡単には発掘できない大切なもの。
ありふれて退屈な日常のことをほんのすこし愛おしく感じられるかもしれない、そんな映画。
それにしてもやっぱりノア・バームバック界隈の作品は最高!と再認識。
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