柏エシディシ

レディ・バードの柏エシディシのレビュー・感想・評価

レディ・バード(2017年製作の映画)
5.0
ロック史における1991年の如く傑作が連発されている2018年映画界(厳密に言うと2017年なのかな?)。
そんな傑作群の中でも、これがマイベスト暫定1位!だーいすき。すべてが。1分、1秒が。

好き過ぎるので、長くなります。失礼w

グレタ・ガーウィグの半自伝的作品で故郷サクラメントや母親へのラブレターの様な個人的な作品では勿論あるのだけれど、単なる「女性監督の私的映画」とだけでは消化出来ないと思う。
もっと広い射程をもつ青春映画だし、素晴らしい青春映画が常にそうである様に、もっと深いユニバーサルな映画だと思うのです。
青春映画がある青春の終わり「卒業」を活写する時、僕ら観客は自身の経験や失ったものに思いを馳せるのと同時に、未だ折り合いをつけられないわだかまりや手放す事の出来ない思いや、それぞれの個人的な特定の人間関係のあれこれを想起せざるを得ないじゃないでしょうか。
青春映画って、確かにある特定の年代を描くものなんだけれど、人間なんて生きてる限り、ナニかからの卒業だったり、卒業出来なかったりの連続なんじゃないですかね。
優れた青春映画は、誰もが思い至るそういったアレコレを正直に丁寧に描く事によって、登場人物たちと観客を強く繋ぎ合わせてくれる。
「レディバード」はそういったポイント一つひとつ、演技、美術、音楽が、絶妙。
要約すると、「わかーるー」の連続なんですよw

青春映画の傑作として、ベクトルは違いますが「ゴーストワールド」と同様、今後マスターピースとして語り継がれ、引き合いに出され続けるであろう一本。
ありがとう、グレタ。ずっと観続けます。

公開初日に鑑賞後、好き過ぎて感想がまとまらず、先日おかわり鑑賞して、やっぱり上手くまとまらないので、好き過ぎるポイントを列記していきます。

・シアーシャ・ローナン。マジ、すげぇ。若手屈指の実力者である事は周知でしたが本作は「グレタ」の分身として仕草や動きまで完全に自分のものにしてる。グレタと化してる。是非、過去作のシアーシャと、グレタの出演作と比較して観てみてくだされ。体躯やお顔の系統も全く違うのに。20センチュリーウーマンのアビーはクリスティンの将来なんじゃないかな、なんて思ってしまう。

・ママことローリー・メトカーフ、本当に素晴らしい。母親の複雑な心情を繊細な演技で見事に体現。娘に対する厳しさと周囲の人への暖かさを違和感なく共存させている。派手な演技ではないけれど「これ、ウチのかーちゃんと似てんなぁ」と思うこと多数の実在感。

・「主人公の親友」役にジョナ・ヒルの妹ビーニー・フェルドスタインをキャスティングした人、天才でしょ。傑作「スーパーバッド童貞ウォーズ」と合わせ鏡。出てるシーンはみんな大好きです。これから出演作増えて欲しい。

・後年、ルーカス・ヘッジズとティモシー・シャラメが二人とも出演してる作品としても記憶されるであろう本作。ルーカスヘッジズは少し捻くれた男の子役が多かったのですが、こういう素直な子も上手いですな。ティモシー・シャラメのカス男ぶりもナチュラルで憎いわーwエリオとはまた違うフェロモン出てる

・ジョン・ブライオンの劇伴は、文句なく最高です。LP盤買いました。少し奇妙で優しい彼の音楽が本作の印象に与えてる影響は大きいと思います。

・既成曲のセレクトは奇をてらうこともなく、グレタが2000年頭にリアルに聴いてた曲を素直に使ってるのが逆に面白いですね。「ヒットしたんだから、文句ある?」って台詞にはウケましたw
おセンチなヒット曲としてのデイヴマシューズのcrashの使い方とか。好きなんだからいいじゃん!っていうグレタの声が聞こえてきそう
アニー・ディフランコのポートレートがレディバードの部屋に貼ってありますが、サントラにも収録されてるlittle plastic castle ってどこで流れましたかね?気づかなかった、、

・パティケイクスakaキラーPが一瞬登場でアガる。

・カソリックに対するグレタの複雑な思いというか距離感がリアルというか一面的でない、と感じられると共に、本意を聞いてみたいと思うところ。レディバードに批判させながら、それでも自分のルーツとして
無視出来ないということかな

・兄ちゃんの恋人の台詞、沁みますよね。

・ラヴィアッチ神父の語られない物語。必要ないっちゃ必要ないのかもしれないけれど、その「余白」が主軸の話の厚みに繋がっていて、やっぱり大切。

・アメフトの第2監督の代理担任、おいおい大丈夫かよwと思わせつつ、結局上手くいってるのもウケる。

・レディバードとママの親密な空間として乗用車の運転席と助手席を使うのはとてもアメリカ的だし寓意もいろいろ込められてて面白いですよね。開幕と終幕で繰り返す使い方とか、上手い。
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