えいがドゥロヴァウ

レディ・バードのえいがドゥロヴァウのレビュー・感想・評価

レディ・バード(2017年製作の映画)
4.0
若さとは無知であって
無知だからこそできる無謀がある
「大人になること」の定義は色々あるだろうけど
憧れや幻想が打ち砕かれることを経て
本当の(若しくはよりそれに近い)理解を得るということが
そんななかでも良くも悪くも大事な要素のように思えて
主人公のレディ・バード=クリスティンの姿を通じて
この映画はあくまでも飾らずに等身大で
だからこそ普遍的なモラトリアムと大人への通過儀礼を描く

成功(自己実現)への憧れと幻想
裕福な暮らしへの憧れと幻想
セックスに対する憧れと幻想
それらがあるからこそ生じる現状へのフラストレーション
そんな負の感情が若いときは兎角も「外」に向きがちななかで
真っ先に矛先が向かうのは一番近い存在である親に他ならない
思春期の子供にとっては
親がたとえどんな親であれ
そんな親であることが不満でならない
ないものねだりは若さの限定的な特権

ただ、自分は親という立場を経験していないながら
年齢的にはレディ・バードよりもその母親に感情移入する面が大きくて
僕が本作で涙したのは
レディ・バードが母親に対して率直に感謝の言葉を投げかけてすがりついているのに
それを無視し続ける母親の姿でした
自分が本当に聞きたかった言葉を娘が口にしているのに
素直に受け止められない状況のもどかしさ
その不器用さと不完全さと人間臭さと愛おしさ
もうこの作品も『Mommy』『20センチュリー・ウーマン』と一緒に
偉大なるマザコン映画としてカテゴライズしてしまおうと思います