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レディ・バードのkouのレビュー・感想・評価

レディ・バード(2017年製作の映画)
4.0
痛々しい10代のころの記憶がこの映画を見て思い起こされる。自らをレディバードと名乗る主人公の輝いていながらも痛々しい青春を描いた作品だった。そして何よりも母親と娘の話だった。

母と娘は常に衝突を繰り返す。それは特に進路のことで。どうしても町を離れたいと思う主人公と地元の大学へ進ませようとする母親、レディバードは母親に隠れて町を出る方法を探す。レディバードは、将来と家族と恋人と友情の間で悩み、行動していく。その姿を見ると決して美しい事だけではなかった青春を思い出させる。しかし、それこそ、とても愛おしくもあるのだ。そんな日々をテンポよく、ユーモアたっぷりに描いている。

この映画を見て1つ思ったのは成長と行動の範囲は比例するという事だ。子供のころ、家の中でしかなかった世界は成長につれ少しずつ範囲を広げる。自転車に乗れるようになれば隣町まで、電車に乗れるようになれば隣の県まで。運転免許をとればどこまででも行ける。それは「自らの生まれ育った町を離れることもできる」、という事である。映画のラスト、涙なくしてみることができない。レディバードが手紙を読んでいるとき、彼女が見る景色は何か。彼女の確かな成長と、それ故のラストにどうしても泣けてしまう。自分が歩んできた道と、そして人生と。遠くにある故郷と、観ている人の共感を確かに呼ぶ傑作だと思う。
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