MasaichiYaguchi

森のカフェのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

森のカフェ(2015年製作の映画)
3.3
本作では哲学、特にデカルトの「心身二元論」をモチーフに取り上げているが、小難しいことはなく、逆にオシャレで乙女チック、そしてユーモアが溢れていて肩の力を抜いて鑑賞することが出来る。
主人公の松岡哲司は、締切が迫っている哲学論文の執筆が進まず、気晴らしに出掛けた紅葉彩る公園で不思議な若い女性と出会う。
自称「森のカフェ」のウェイトレスである“不思議ちゃん”が淹れたコーヒーを介在した奇妙な交流が始まるが、この交流が論文執筆の袋小路にはまった主人公に思わぬヒントを与えていく。
ストーリーが展開するにつれて、この“不思議ちゃん”の正体も明らかになるのだが、この二人はある意味対を成す関係で、映画の中盤から交錯していく。
本作で取り上げられたデカルトの「心身二元論」が映画の終盤で分かり易く説明されるが、物と心を分けて捉えるこの哲学は、本作が醸し出す文学的、芸術的、そしてロマンチックなものとは相容れない対極の考え方。
哲学は物事を根本原理から統一的に把握、理解しようとする学問だが、全てを即物的、合理的に考えていたら、妖精のいるファンタジーは生まれない。
物事の真理を追究しながらも、解明出来ないもの、未知なもの、理詰め出来ない余白を美味しいコーヒーと共に味わうようなゆとりや潤いのある生き方が理想的なような気がする。