まこぞう

ベテランのまこぞうのレビュー・感想・評価

ベテラン(2015年製作の映画)
3.7
現実味がなく、舞うように楽しそうに人を殴るアクション・シークエンスから始まったので「うわ『キングスメン』みたいに軽薄で単にくだらないアクション映画か…苦行だな…」と落ち込んだけど、それは始めだけでしっかりした娯楽アクションの秀作で最高だった。中盤以降のアクションはちゃんとしている。

今一番好きな俳優、ファン・ジョンミンは、ちょっと前に観た一代記みたいなのはスケールがデカいだけの凡作だったけど、本作ではスーパー刑事ではない、しがない平刑事だけどちょっとスマートという彼に合ったキャラが爆発で満足。

敵の極悪ボンボンは1ミリも良いところがなく反省もしない素晴らしい悪役。叔父のメガネ野郎と合わせて本当に憎たらしくて映画的に良い意味でイライラさせられっぱなし。特に子供の眼前で殴り合いをさせるシーンには怒りで手に汗をかいてしまった…。

美人じゃないのに周りから美人キャラ扱いの女刑事、小沢昭一そっくりで小狡そうな先輩などなどの脇のキャストも素晴らしい。中でも余り出てこないファン・ジョンミンの鬼嫁が最高! 彼女が警察署に乗り込んで「本当に恥ずかしく思ったのは、心揺らいでしまった私自身のことなのよ!」と怒鳴るシーンには泣いてしまった…。

ボンボンがいる悪の大企業は名前とTMからしても明らかにサム*ンをモデルとしているのが分かるけど大丈夫なのかな。
その企業の会議中は会長の目の前ではトイレには行けないと、事前に社員達がオムツを着用するのは韓国では本当にありそうで笑った。

何気に警察組織の腐敗、大企業と官の癒着、芸能界の枕営業など韓国社会の闇も描いていた。そして何よりも特徴的なのが、そういったことも描きながらもコメディ要素があるせいか、死人が出ない(死ぬかも?はある)ことだ。そこが最近のリテラシーの欠けたハリウッド軽薄映画と違う。

元からそう言っているのかも知れないけど、記者が記事のことを「作品」と言っていたり、字幕の訳も面白かった。

エンドロールも『コードネームUNCLE』あたりを思わせる洒落た感じだけど、ハリウッドをパクった感じではなく娯楽映画のトレンドを研究した結果偶然そうなった感じがする。韓国は日本と違って、今や立派な映画先進国だ。
そもそも幼稚な『コードネーム〜』や『キングスメン』と比べるのが失礼なくらい良く出来た映画だと思う。

しかしその2作が世界的大ヒットをしているのをみると、私の感覚がズレているとしか思えない…。
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