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9.11~N.Y.同時多発テロ衝撃の真実のdm10foreverのレビュー・感想・評価

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【真実】
記憶は定かではないが、初めてこの映像を観たのはBSかなんかだったような気がする。
当時はまだ事件の記憶が鮮明で、速報で流れたニュース映像が脳裏にこびり付いて若干トラウマになりかけていた時期でもあった。
しかし、どうしてもキチンとみたいと思っていたとき、偶然HMVでDVDを発見し迷うことなく購入。

 それから何度みたかわからない。
映像にはドラマティックな部分もなければクライマックスの盛り上がりもない。音楽すらない「ドキュメンタリー」だ。
 だから「Why」も「Because」もない。ただ目の前で起きている惨事を映像に残し続けたという事実を黙って受け入れるという作業・・・。

 日本に生まれた自分は幸か不幸か「宗教的対立」の構造をあまり理解していない。ぼんやりとした輪郭はわかる。
それは映画やマンガやゲームから入ってくる情報を断片的に繋ぎ合わせた程度の弱い理解。
つまり「根本にあるもの」に関してはほぼ無知に等しかった。

 「事件が起きたときの状況が忘れられない」という件については「ユナイテッド93」のレビューでも触れたが、あの第一報が流れた直後は、まさかそれが「テロ」だなんてこれっぽっちも思っていなくて「酷い事故が起きてしまった・・・」くらいにしか考えていなかった。
しかし、2機目が突入する映像が流れた瞬間、世界は事の重大さを知ることになった。
本当にあの瞬間の恐怖について的確に表現できる言葉を僕は未だに持ち合わせていない。

この映像はもともとジュールとゲデオンのノーデ兄弟がニューヨークのとある消防署の新人を密着取材するというドキュメントとして撮影されていた。
そこには緊急出動する消防士達の姿だけではなく、彼らの訓練風景や夜勤の過ごし方などの日常的な姿も映されていて、その中で新人が少しずつ成長していく過程を追う・・・という、ローカル番組によくありそうなプロットだった・・・あの日までは。

その日も何気ない1日のはずだった。
NYの街中でガス漏れが発生しているとの通報が入り現場に急行する消防署員たち。密着する彼らも同行する。
現場に到着し、マンホールでガス探知を行なっていると、突如、後方上空から聞いたこともないような爆音が響き渡る。

「!!?」

慌てて音のするほうにカメラを向けると、世界貿易センタービルに突っ込んでいく旅客機の姿が映っていた。
ビルに突っ込んでクラッシュした映像から、コンマ何秒か送れてとてつもない爆発音が届く。
そうか、光速と音速では届く速度も違うしな・・・なんて変なところに感心しつつも、目に飛び込んでくる映像に息を飲む。

「だって、あそこにはまだ沢山の・・・」

もう一度言う。
これは「映画」ではない。
実際に起きた事件を撮った「ドキュメント映像」である。
「血が流れるシーン」では本当に血が流れているし、「人が死ぬシーン」では本当に人が死んでいる。

すべてが真実なのだ。

この事件が起きたとき、当時のアメリカ大統領ジョージ・W・ブッシュはフロリダ州サラソタの小学校にいた。
小学生が朗読するのを聞くという行事に出席していたのだ(自身の教育政策のプロパガンダでもある)。
会はとても和やかな雰囲気で進んでいたが、突然会場に飛び込んできた側近がブッシュに耳打ちをする。
一瞬顔を曇らせるもブッシュは小学生の朗読を聞き続けた。

実はブッシュは小学校に到着した時点で1機目が突入したことは把握していた。
だから側近が耳打ちしたのは「2機目」のことだったのである。
しかし、彼は「事故だ」と片付けて朗読を続けた。
そして直後の記者会見でこのように述べている

「あなたはテロ攻撃のことを聞いたとき私がどういう状態だったか信じてくださらないと思いますが、(私は)フロリダにおりました。そしてわたしの筆頭補佐官であるカードが側におりまして、教室で読書会について話をしていたんです。(実は)教室に入る前、外で待ってまして、そのときテレビがはっきりついていたんですね、それで飛行機が貿易センタービルに突っ込んで行くのを目にしたわけです。そして酷いパイロットがいるものだ、これはとんでもない事故に違いないと言ったのです。(原文ママ)」

つまり「1機目」の突入を観たと言っているのだ。

しかしそれはあり得ない。
CNNなどの主要メディアが全世界に向けてLIVE放送を行なったのは1機目の事故(事件)発生後。
つまりこの時点で1機目が突入する映像はまだ誰も観ていなかったのである。

大統領が嘘をついている・・・。

ここから先は近藤春菜監督・・・じゃなくてマイケル・ムーア監督の「華氏911」で詳しく触れているが、一気に「単純な事件ではない匂い」がプンプンしてきた瞬間だった。

ただこのドキュメンタリーではそんな事すら関係なかった。
ここに映し出される消防士達は命懸けで人々の命を救おうとした。
そこには「真実」しか映っていないのだ。
CGバリバリで作られたフィクションだったとしても凄い映画になったかもしれない。
だけど、ここには一片のフィクションも存在しない。

まさにこれは「知っておくべき人類の記憶」とも言える映像だと思う。
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