KanaiSatoru

残酷で異常のKanaiSatoruのレビュー・感想・評価

残酷で異常(2014年製作の映画)
4.0

残酷で異常という映画を観ました。
若干、ネタバレあるため承知の上で読んでください。


とてもマニアックな映画で、妻殺しとして疑われた男がある建物に閉じ込められて出れなくなる、というもの。

いったい誰が閉じ込めたのか?
いったいどこに閉じ込められたのか?
本当に男は妻を殺してないのか?

こう書くと、ミステリー、サスペンス映画かと思われそうですが、違います。
この映画、ある意味ファンタジーです。
妻殺しのファンタジーてなんだよ!

まあ詳細は観てもらいたいのですが、実は男はすでに死んでいて、地獄にいます。
皆さんどのように解釈したか教えてほしいですが、自分は地獄にいるだな、と解釈しました。
このあたりは序盤、すぐ分かるので書いてもよいでしょう。
この映画を分かりにくくしているのは、その地獄の場所や風景や与えられる苦悩が、僕らが想像する地獄と全く異なるからです。

地獄に落ちた男女は、建物内にいる同じような罪を背負った男女の前で、全員が毎日毎日、順番に罪を告白して過ごします。
反省してます、許してください、と言っても罪の告白は順番にやってきます、逃れられません。

毎日、自分の犯した罪をリアルに思い出しながら、永遠に告白を繰り返す日々。
まさに地獄ループです。

そんな地獄に放り込まれた男は、だんだん妻殺しの罪を認めて告白をしなければならない、という状況にあることがわかってきます。
でも俺は殺してない!殺す理由もない!
男は、罪を認めず叫び、暴れて建物から脱出しようと試みます。
さて男は地獄から脱出できるのか?

男の人相は悪く、中年の汗かきオヤジで、画面のほとんどにこの男が出ているので、こいつがどうしようもない奴に見えて仕方がない、早く罪を認めて反省しろ、と思わせる演出は見事です。
脱出しようとする男を応援する気も起きないなんて、逆の意味で感情移入しやすい作り。

そしてラスト、少しだけ救われた感があるのは、ファンタジーとして見れば、さらに加点、映画はこうであって欲しい。

地味な映画ですが、なかなか良作と思います、人に胸張ってオススメできませんが、個人的には80点です。
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