骨折り損

残酷で異常の骨折り損のレビュー・感想・評価

残酷で異常(2014年製作の映画)
3.7
これは難しい映画...なのか?

妻を殺していないのに、その罪で殺した日を何度もループする男。全くのノーマークだったが、アマゾンプライムで見かけたログラインだけで気になって視聴。

結果、なんだか複雑で哲学的なことをしているっぽいが、所々低予算な感じを匂わせる演出で、実は浅い映画なのかもしれない。深そうで浅そうで、結局よく分からない。

まあ究極深いか浅いかはどっちでも良くて、やろうとしている事自体は面白かった。奥さんを殺すつもりがなく、事故死だったと言い張る男。でもその奥さんはその男を殺そうとしていた。だから彼女が煉獄に行くべきでは?という問い。非常に考えがいのある材料が、観客に投げ込まれる。最初は可愛そうな人だった男だが、煉獄を繰り返す中で、奥さんや息子、弟の立場を疑似体験し、自分の異常性に気づき始める。

彼自身が自分を客観的に見るプロセスが、観客の視点とシンクロしていて、非常に見やすい演出だった。
誰の立場で話を追うか、それがなによりも大事な事だと改めて気付かされた。

結末が見えない独創的な設定と話運びに、最後まで飽きずに見ることができる。しかし、その肝心のラストがやや安っぽい印象を受けた。ラストの演出のせいで、今まで深そうな映画だと思っていたところに疑問符が浮かんでしまった。やっぱりどう映画を終えるかはセンスの答え合わせという点でとても重要だ。

物語を綺麗な構成にしようとしているのが見透かされるようなラストでは観客は満足しない。難解でも、物語に誠実なラストこそが、必要なものだ。
骨折り損

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