えんさん

グッドモーニングショーのえんさんのレビュー・感想・評価

グッドモーニングショー(2016年製作の映画)
2.5
朝の情報番組でメインキャスターを務める澄田真吾。彼はかつて報道番組のエースキャスターだったが、ある震災現場からのリポートが世間から避難を浴び、それ以来、現場リポートができなくなってしまっていた。降格扱いで務める今の朝の番組も打ち切りが決まり、片や不倫発覚の危機に困惑する中、都内で立てこもり事件が発生する。澄田は、なぜか立てこもり犯の交渉役に指名されるのだが……。「遺体 明日への十日間」の君塚良一監督が生放送のワイドショーに携わるテレビマンたちの姿を活写するコメディ。

予告編を見ても分かると思いますが、結構コテコテのコメディ映画。君塚監督といえば、脚本家として、「踊る大捜査線」シリーズを手がけてきた人なので、あのような面白さが安定して発揮されているといえば、観ようかとちょっと思った人も安心して観れるのではないかと思います。ハリウッドに比べ、コメディという分野の認知度も、数自体も、日本映画は少ないのかなと個人的には思っています。「みんなのいえ」、「ラヂオの時間」などの三谷幸喜監督、「ウォーターボーイズ」、「スウィング・ガールズ」などの矢口史靖監督、、くらいかなと思ったり。コメディというと笑わせればいいという軽い感じのものではなくて、特に三谷作品とかにあるように、笑いの中に、人の生き方の悲喜こもごもが詰まっているような味わいを感じさせてくれる、、これがコメディ映画の醍醐味だと思います。古くは、狂言や落語など、人の情というものを笑いに昇華させることが上手い日本人だからこそ、もっと質の高いコメディ作品の登場を期待したい昨今なのです。

と、話がそれたところで本作ですが、テレビの朝の情報番組という枠、それも主人公・澄田の人生を変える一日を追う形で進むところがユニーク。たった1日の、朝の情報番組2時間(?)の枠で、映画も終わるのがいいんです。君塚監督が脚本家出身ということもあって、それぞれの登場キャラクターに喋らせる台詞だけで、そのキャラクター像が背景も含め、しっかりと想像できてしまうところがなかなか。引きこもり犯とのやり取りのところは正直あまり面白みはなかったですが、全てが終わって、澄田が家に帰ったエピローグ部分などは、さすがセンスの良いシークエンスに仕上げているなと思います。

主人公・澄田の生真面目だけど、どこか憎めない、それでもキャラを打ち破れない中年の親父の悲哀を中井貴一が好演しています。それよりも僕がいいと思ったのが、澄田の上司を演じた時任三郎ですかね。澄田の本心を見抜きながら彼を支え、同時に、自分が番組の作り手でもあるという意思を持ったプロデューサー像をスマートに描ききっています。驚くのが、すっかり三枚目キャラ化してしまった長澤まさみでしょうかね。一昔前なら、宮本信子や室井滋などが演じそうな役どころですが、今年のNHK大河ドラマ「真田丸」も含め、同じような立ち位置になる役柄のイメージが非常に強くなってきました。彼女に合うといえばそうですが、今後の彼女の役者としての成長ぶりを追っていきたいとも思わせる作品となりました。