なかなか面白かった。爆笑とまではいかないけど、くすっとくる笑いがちりばめられていて、終始、軽妙なテンポで進むのもよかった。また、テレビ制作現場のリアルさが徹底的に作り込まれている一方で、ところどころ「いや、そんなのあるわけないだろ」という設定も作品の持つコミカルな要素の一つとしてさらっと共存していた。と、単なるおちゃらけ話かというと、そういうわけでもなくて、取り上げられているテーマだけを見てみると、なかなか考えさせられる内容。
特に好きだなぁと思ったのは導入部分。静かな起き抜けに息子のデキ婚話がひっそりと登場し、主人公の職業とかテレビの話なんか関係ない、ひとりの父親が描かれ、このあと何か起こるぞ、という予感とともに、一気に作品の中に引っ張りこまれる。
そのあとのテンポのよい展開と冒頭と同じくらい静かに落ち着いた終わりも良くて、起承転結がものすごくきれいにまとまった作品。
ただ、惜しむらくは犯人の心理描写が明らかに不足していたことかな。濱田岳の演技は観ているこちらもドキリとするほど迫真の演技だったが、ただただ狂気しか感じられず、その動機に本来報道の矛先となるべき社会悪が関係しているのか、それとも犯人がただ利己的なだけなのか、観ている自分は犯人に同情すればいいのか、などもやもやしてしまった。
コメディであるからこそ、純粋に笑えるようにするためには、その部分の作り込みをもう少し期待してしまう。
とは思うものの、総じて面白かった。
中井貴一はやはりコメディが合うなー。
ちなみに自分も朝のワイドショーは嫌いなタイプ。でも、この映画を観て、捉え方が少し変わった気がする。
