TaiRa

ダウンサイズのTaiRaのレビュー・感想・評価

ダウンサイズ(2017年製作の映画)
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アレクサンダー・ペインがSF映画?って思ったけど、ちゃんと彼の映画だった。故に傑作。

中年男のミドルエイジ・クライシスから始まる如何にもペイン的なスタート。尚且つ人間を縮小させる技術について発見から応用、定着までを丁寧に見せる律儀さ。大嘘つきながらSF考証は細かく、そのディティールの描き方も徹底していて楽しい。生身の体しか縮小出来ないという台詞を聞いて、「じゃあ差し歯とか取るのかな」と思ったらちゃんとそういうシーンがある。「逆に取らなかったらどうなるんだろう」という疑問にも後に答えがあったりする。妻から捨てられる展開などは男性性やアイデンティティの縮小の象徴にもなっていて上手い。リチャード・マシスンの『縮みゆく人間』も男性の自信喪失が反映されてる。小さくなっても社会の縮図は変わらないというのがまた皮肉。クリストフ・ヴァルツとウド・キアが開いたパーティーなんて怖くて行けない。役者は隅々まで豪華でみんな良い。カメオのローラ・ダーンなんてペインのデビュー作以来かな。『ハイスクール白書』のリース・ウェザースプーンも出る予定だったそうだけどクリステン・ウィグに代わったみたい。割と過去作の色んなテイストが入っていてある種の集大成になってるのも意外。最終的には「僕は僕である」という『サイドウェイ』的なテーマに着地。あとホン・チャウの芝居がとても上手かった。ファックの種類8つ覚えたい。
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