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ダウンサイズのkouのレビュー・感想・評価

ダウンサイズ(2017年製作の映画)
4.0
《流された先》
「アバウトシュミット」「サイドウェイ」「ファミリーツリー」「ネブラスカ」傑作を作り続けた監督、アレクサンダー・ペインの最新作。今作はより良い暮らしを求めて、人体を13㎝に縮小させ、ミニチュアの世界で生きることを決めた男の物語。

小さくなった世界、そして小さくなるまでの過程というのも面白いが、今作はそれ以上に主人公の人生が変わっていく話でもある。アレクサンダー・ペイン監督の魅力はそこにあると言えるだろう。人間が小さくなるという奇想天外さ、という所に決して収まらない。僕らの実人生につながっていくのだ。

今のままの生活では裕福な生活ができないと悟った主人公は、妻とともに小さくなる道を選ぶ。小さくなった世界で主人公は幸せを探そうとする。そして彼は、流されるようにある所へとたどり着くのだ。その先の展開はネタバレになるので書かないが、彼は自分の人生に「意味」をもたらせるのではないかと語る。今作はある意味、クリント・イーストウッド最新作の「15時17分…」と対をなすかもしれない。「15時17分…」ではある結末に向かい、すべての選択がそこへと集結していたという展開を迎えるが、今作はそうではない。主人公は今までの選択が大きな目的へ向かっていたと、終結させようとする。しかし、彼は「流される」「挫折する」ことで違う方向へ向かっていくのだ。

僕らの人生はすべて、何かの意味へ向かって進んでいるわけではない。数々の決断はいつだって未来への不確定さの中から選択している。じゃあそんな男の未来はどうなるのか。映画の結末は、とても小さな世界だが、大きな感動を生む。
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