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ダウンサイズ(2017年製作の映画)
3.8
 アメリカネブラスカ州オマハ、大学に通い、理学療法士を夢見たポール・サフラネック(マット・デイモン)は母親の介護のためにオマハにある実家へ戻って来た。鬱々とした平凡な毎日に耐える彼の前に、1本の画期的なニュースが飛び込む。ノルウェーの科学研究所、ユルゲン・アスビョルンセン博士(ロルフ・ラスゴード)は人間が13cmに縮小する画期的な発明をした。その5年後、トルコでの発表会で試験的な運用が明らかにされた。副作用もなく、1~2時間で体の機能も回復するその発明にポールは目を輝かせるが、母親の愚痴は止まらない。それから10年後、看病の甲斐なく母親は他界、ポールはオードリー(クリステン・ウィグ)という生涯の伴侶を得た。だが日々の暮らしの貧しさは変わらない。久しぶりに催されたクレイトン高校の同窓会、友人がダウンサイズした話を聞いて、ポールの心は大きく揺れる。相変わらずの実家暮らしで、住宅ローンの審査に落選したポールは、妻のオードリーを伴い、ダウンサイズすることを決断する。妻に来世で会おうと告げたポールは髪と眉毛を剃られ、歯も全て抜かれ、13cmのサイズに縮小する。だが妻のオードリーは剃毛されたショックでレジャーランドを飛び出していた。家族や友達と離れられないと涙ながらに語った妻とは1年後、離婚した。

 わずか13cmのサイズに縮小されることで、現世の82倍もの富を手に入れられるダウンサイズに男は全てを賭けるが、皮肉なことに妻は俗世への未練が捨て切れず、ポールを見限る。運命の女に見限られた男は、せっかく手に入れた豪邸や新しい環境を楽しめないまま、淡々と1年が過ぎる。結局豪邸を手放し、マンションでの生活を求めたポールはクリステンというシングル・マザーと付き合い始めるが、恋愛は上手く行かない。苛立ちを抱えるポールは階上に住むドゥシャン・ミルコヴィッチ(クリストフ・ヴァルツ)という男に出会う。内向的なポールとは対照的に、社交的で人生を謳歌するドゥシャンの態度に当初は苛立ちを見せたポールだったが、彼と遊ぶことで徐々に人間らしさを取り戻す。ドゥシャンに届けた黄色いバラ、狂乱のレイブ・パーティの席で謎の女に口移しされた青い錠剤、やがてポールはソニア号という名の船に乗るヨリス・コンラッド(ウド・キア)を紹介される。変な錠剤でハイになった男が酔い潰れ、目覚めるとそこにはハウス・キーパーで義足のノク・ラン・トラン(ホン・チャウ)がいた。ダウンサイズで人生をやり直せると夢想した男は最愛の妻に逃げられ、ベトナム人活動家を伴いながら、生きる道を探す。人間はサイズの大小に関わらず、根源的な悩みや希望は変わらない。アレクサンダー・ペインのこれまでの作品のように、負け犬根性が染み付いた人生の落伍者は、最後に人生の大きな決断を下す。その判断を含め、ポールはどこまでも人間臭く愛らしい。
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