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ソーセージ・パーティーのnetfilmsのレビュー・感想・評価

ソーセージ・パーティー(2016年製作の映画)
3.8
 スーパー・マーケット『ショップ・ウェルズ』の朝、店長が室内の電源をオンにし、入口のドアが開く。外の世界は天国の楽園だと信じる食品たちの朝の歌声。彼らは人間を神様だと信じ込まされ、カゴの中にピックアップされる時を今か今かと待ち焦がれている。整然と並んだソーセージの陳列棚、「Fancy Dogs」と記された8本入りのソーセージの中にフランク(声=セス・ローゲン)がいる。彼の隣に並ぶバリー(声=マイケル・セラ)は規格外の不良品としてウィンナー仲間にイジメられている。隣り合う陳列棚にある「GLAMOUR BUNS」というホットドッグ用パンの中にはフランクの意中の女ブレンダ(声=クリステン・ウィグ)がいる。毎日見つめ合う2人の恋は、「先っちょだけ」の誘いに気持ちが弾む。指と指の先を触れ合う場面はまるで『E.T.』のようなカタルシスを誇る。生殖器のメタファーであるホットドッグ用のパンとソーセージとは、フランクが作った輪っかをブレンダの指が突く。明日は独立記念日で、ホットドッグが大量に作られることを知っている食品たちは、今日こそ自分たちの安息日がやって来るのを待ち焦がれている。神に選ばれた日、ようやくブレンダと一緒になれると満ち足りた表情を浮かべたフランクの元に、ハニー・マスタードが恐怖の言葉を呟く。「ドアの外は天国ではなく地獄だ」と。

 そもそも彼らが誰の情報を受け取り、外の世界は楽園という情報を信じ込んでしまったのかは謎だが 笑、ハニー・マスタードの死により疑心暗鬼に駆られたフランクとブレンダの悲しい逃避行が始まる。彼らを助け、お供するのはベーグルのサミーベーグル・ジュニア(声=エドワード・ノートン)とペラペラのカリーム・アブドゥルラヴァッシュ(声=デヴィッド・クラムホルツ)である。広いスーパー・マーケットの店内、楽園目前でノズルを折られ、フランクに恨みの感情を募らせた女性用ビデ(声= ニック・クロール)が怪物化し、ソーセージに襲いかかる。生殖器のメタファーであるホットドッグ用のパンとソーセージのカップルを、モンスター化した膣洗浄器が襲うというある種倒錯した構図は実にシニカルなブラック・ユーモアに溢れる。子供が見たらトラウマになりそうな食品版『トイ・ストーリー』と呼ぶべき物語は、クライマックスで『進撃の巨人』のような現実を見せつける。セス・ローゲンとは微妙に笑いのツボが違うようで、例のホーキング博士そっくりのガム博士の登場も、心優しきレズビアンとして登場したテレサ・デル・タコ(声=サルマ・ハエック)も普通に格好良い救世主として見守ったのだが、Meat Loafの登場場面と麻薬中毒者(声=ジェームズ・フランコ)がソーセージと会話する場面のあまりのバカバカしさは流石に笑った。大量の食品が廃棄される先進国の現状を憂いながらも、ラスト12分の卑猥さとトラウマはディズニーやピクサーが天下を二分する現代では明らかに不健全で有害極まりない。最高というのは憚られるが、心底最高なおバカ映画である。
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