秋日和

ブルーに生まれついての秋日和のレビュー・感想・評価

ブルーに生まれついて(2015年製作の映画)
3.5
イーサン・ホークが自身の顔に触れるとき、彼はこっそりと一つの告白をしている。映画の中腹で呟かれる女の台詞によって暴かれる彼の無言の告白が、後に訪れるとあるショットと哀しい関係を結んだとき、決して幸福とは言えない終わりを迎えるこの映画を、とてもいとしく思ってしまった。
口と口が近づけばキスが交わされるけれど、口とマウスピースが近づいても音が響くとは限らない。「どん底」から彼女を見上げていたイーサン・ホークが、いつの間にか階段を下りていく彼女を見下ろしている。この映画の中で一体いくつの痛ましさが通りすぎていったのだろうか。好きな人にだって言えないことはたくさんあるもんだよ……「さっき俺のファンだって言う女の子に誘われちゃった」なんてことは勿論、またクスリに手を出しちゃったなんて言えるわけがない。だから、冒頭にも書いた通り、イーサン・ホークは言葉ではない方法で彼女に謝罪をする。それは音色によってじゃない(彼の生み出す音色は変わらず素晴らしい)。「音」ではないものによって、そして彼と彼女にしか分からない方法=行動によって果たされる、それがとても良かったな。甘い歌詞や台詞のなかにはない切実さが、そこには確かにあった。