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ブルーに生まれついての3104のレビュー・感想・評価

ブルーに生まれついて(2015年製作の映画)
3.7
日本でも根強い人気のチェット・ベイカー。
破滅型ジャズメンの代表選手と言ってもいい彼の波乱に満ちた半生を描いた、伝記的性質を持つ作品。波乱に満ちた生涯の中でも、歯を折られて演奏ができなくなってから紆余曲折の末に“復帰”するまでの特定の時期にスポットを当てている。
ドキュメンタリーではない。では伝記映画かといえば伝記映画なのだが、多分にフィクションの要素が多く盛り込まれている。例えば冒頭の彼の伝記映画のくだり。映画の企画自体はあるにはあったが、実際には撮影は行われていないそうだ。さらにはそこで出会う共演者役のジェーンも架空の存在なのだとか。おいおい全編にわたり彼を支える彼女は、実は“つくりもの”だったのか・・。
しかし映画として、作品としてのバランスを考えるうえで、こういう「フィクションのブレンド」はしばしば成されるもの。それが伝記的性質が強い作品であったとしても。だがその“味付け”も度が過ぎると、また使いどころを間違えると台無しになるのは、過去の数多の“失敗例”がはっきりと証明している。
その点において今作におけるその~偶然か必然かはわからぬが~“味付け”は、知らなければ真実、知っていても映画を構成する諸要素としていずれにせよ不思議な調合の具合になり、結果としてプラスに作用しているといえよう。

自分で書いておきながらそんな理屈は正直どうでもいい。この映画の見どころはたったひとつ(といっていい)、主演のイーサン・ホークだ。
確かにメイクなどで「寄せて」いる部分はあるがそれだけではない、むしろそういう外面的な要素以外でチェット・ベイカーを表現している。彼≒チェットが纏う「色気」や「純粋」、そしてもがきながらも進み、進みながらももがく様子を享受するためだけに、この映画を観るという選択は決して間違ってはいないはず。
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