イチロヲ

グリーサーズ・パレス(原題)のイチロヲのレビュー・感想・評価

3.5
西部開拓時代に姿を表した救世主が、暴君の独裁体制が常態化している小さな町に到着する。新約聖書におけるイエス再臨をモチーフにしている、ブラック・コメディ映画。

主人公の青年は、死人や患者の身体に手を当てて「If you feel, you heal.」と唱えると、立ちどころに全快させられる能力をもつ。「自分は舞台役者になるためエルサレムを目指している」という曖昧な記憶を手掛かりに、現地民との交流を繰り広げていく。

本編内容は、のんびりしたタッチの不条理劇そのもの。気に入らないことがあったら即座に発砲する暴君、ゲイという理由で何度も殺されてしまう息子、インディアンの集中攻撃を受けてもなかなか死なない若妻など、不適切な表現を喜劇に転換させている。

痛快とは言えないが、やりたいことは分かる、というレベルの不条理ギャグが淡々と進行する。後の傑作「ライフ・オブ・ブライアン」と比較してしまいがちだが、救世主の人物像と彼に集まる信徒のコメディ化という観点では双璧といえる。
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