mitakosama

フードのmitakosamaのレビュー・感想・評価

フード(1993年製作の映画)
3.5
シュヴァンクマイエルのシュールな笑いが発揮された短篇。
ナンセンスジョークと言い直しても良いかな。

食をテーマに朝食・昼食・夕食の3編で構成されてる。シュヴァンクマイエル作品には汚らしく食べるという描写は恒例だし、今作も本当に汚らしい。
それを、役者をコマ撮りにしたストップモーションアニメに、たまにクレイアニメも交えた独自の映像で表現される。

朝食「BREAKFAST」
オッサンが食事をしに部屋に入ると、先に座っている自動販売機人間から食事を買う。口にコインを入れ目のボタンを押すとお腹から食事が運ばれてくる。ファーストフード的なマシン。
食べ終わるとその男が自動販売機男になり、次の男と入れ替わる。それのくりかえし。
あれだ。妖怪の呼ぶ子と同じ原理だ。

昼食「LUNCH」
中年男と、その男の食事マナーを真似する若い男。
食器を食べたり服や靴を食べたり、テーブルを食べたりするのも真似をして食べる。靴を食べるのはやっぱりチャップリンの黄金狂時代のオマージュであるという指摘は多いね。

夕食「DINNER」
優雅な夕食の席につき一生懸命味付けをして、自らの腕を食べる男。
続いて足を食べる男に、乳房を食べる女。
最後に裸の男が食べるのが、チンコ。
ええ…?最後にチンコネタって…ドリフですか…

やっぱり人間の滑稽さ愚かさを、食べるという本能を汚らしく粗悪に見せて表現する手法は流石。
朝食ではオートマチック化された食文化に、昼食ではテーブルマナーなどの権威主義を嘲笑しているのが判る。夕食ではカニバリズムを表し人間そのものも嘲笑の対象にしてるのが見て取れるね。
mitakosama

mitakosama