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プラハからのものがたりのpikaのレビュー・感想・評価

プラハからのものがたり(1966年製作の映画)
4.0
作品鑑賞を補う素晴らしいドキュメンタリー番組。インタビューの焦点が良い。前半はストップモーションアニメを用いる独特な映像制作についてまとめられ、後半は『攻撃的なシュルレアリスト』と評されるシュヴァンクマイエルの制作背景について語られる。
ドキュメンタリー撮影時制作中の「スターリン主義の死」は「100年後には理解されない。登場人物は意味を成さない。」と語りながらも自身の懸けてきたそれまでの集大成のように見える。それまでの作品の中で最も政治色の強い作品であること、なぜそういった意図を込めるのかということ、チェコ人なら誰でもわかる寓意を簡潔に説明し作品を補ってくれている。

非常に興味深いのは現代のシュルレアリストであるシュヴァンクマイエルによるシュルレアリスムについての部分。
シュルレアリスムとは美学ではなく哲学だと言う。二つの大戦の間に起き、失われていったシュルレアリスム運動はチェコの地下で生き続けていると言う。
アニメを用いる理由も語られる。『アニメの技術は現実にあるもののそれ自体のもつ魔法の力を引き出す。ありふれたもの同士の触れ合いに魔術が忍び込むと見慣れたものがいつもと違う顔を見せる。』

なぜシュルレアリスムなのか。
『映画の源は幼年期と夢』
不安や恐怖によって人は作られる。幼年期はそれらが具体的に自身を脅かす時代であるから。フロイト流に解釈すると幼年期は無垢ではなく人間の邪悪さが具現化される時代である。
シュルレアリスムとは性的な妄想であり政治的社会的因習に対する妄執である。(マイケル・オプレイ)

マニエリスムに触れて育った感性がゆえか、代表的な画家であるアルチンボルドとの共通点が見えてくる。幻想的で抽象的な作品でありながら細部のモチーフはリアルである。
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