ふじこ

ルームのふじこのネタバレレビュー・内容・結末

ルーム(2015年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

実話に着想を得た作品らしい。

17歳の時に誘拐され、狭い部屋に監禁されたジョイ。
犯人の男の子を産まされ、その子の5歳の誕生日。
子供のジャックにはその部屋だけが世界で、テレビで観るものはすごく薄かったり、テレビに入るサイズだったり、本物であるとの認識がない。
空だけが見える天窓と、ママであるジョイ、度々訪れる犯人の男だけが本物。
だから狭い部屋の中で元気いっぱいに疑問もなく育っている。

けれど、ジョイは当然逃げ出したくて、息子の5歳の誕生日を機に作戦を立てる。
息子に病気の振りをさせて、病院へ運ばせる隙に助けを求めようとするも失敗。
急遽死んだ事にして死体をカーペットに包み、捨てに行くトラックからの脱出に賭ける。
果たしてジャックの頑張りで作戦は成功し、外の世界へ出る事が叶うが…。


ってお話。前半部分が脱出までのシーンで、後半いざ監禁から戻ってきた親子はどのように生きるのかって感じに変わる。
脱出のためにまだ5歳のジャックに色々教え込むけれど、見たことがないものについては分からないし、”この話したくない”と目を背けようとするのが結構リアルで良かったなあ。

外での世界が始まってからは、夢にまで見た元の生活が親は離婚しているし、父親はジャックの事を認められず、自分が7年監禁されている間に友人たちは普通の生活を送ったろうと想像してどんどん追い詰められていくジョイがただただ可哀想だったなあ。
あの狭い部屋の中ではジャックの母親で彼を守らなければという一点だけが彼女を支え続けた訳だけれど、外に出てからはそのバランスが崩れてしまったんだと思う。
母親のくせにとか、ジャックのお陰で、とかは思わなかったなあ。彼女の気持ちを想像すると可哀想で。
7年前の友人の写真を見て、彼女たちの人生には何も起きなかった、っていうところに胸が痛んだ。

一方初めて世界を目にするジャックの気持ちは想像すら難しいのだけれど、子供らしく徐々に順応し、子供らしく時に残酷で、それでもママが大好きな一人の子供に変わりない。
この子に罪は全くないので、直視出来ないジョイの父親の気持ちもわからんではないけれど、悲しみしかない。
母親の彼氏であるレオが非常に懐の深い男性で、ジャックへのフォローなど素晴らしかったなあ。普通にいい人だ。
母親の方は、完全に鬱状態のジョイにする態度ではないシーンが息苦しかったなぁ…知らない男に監禁されてレイプされ続ける事より人生壊される事ないだろ…。

最後にあの部屋にさよならを言うシーンは良かったなあ。日々めきめき成長を続ける幼いジャックにはこの部屋で生きたことも人生の通過点の一つでしかなくて、だからさよならを告げた後はきっと振り返らずに生きていけるんじゃないかなあというか、そうだったら良いなあと思った。そしてそんな息子を見てジョイも時間は戻らないけれど、これからの人生を歩いていけたらなぁと思った。重たくもよき映画だった。

着想を得たらしい元の事件はとても有名だけれど、あっちは実父から24年の監禁だし、子供も7人も産まされて3人取り上げられてるし、あくまで監禁後の生活って点での着想だったのかなぁ…余りにも重たすぎる…。
ふじこ

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