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ルームのTEPPEIのレビュー・感想・評価

ルーム(2015年製作の映画)
4.9
2度くらいでしょうか、映画館で鑑賞したのは。晴れてオスカー受賞したブリー・ラーソンをハッキリと知ったのは「スコット・ピルグリム」で、その時から彼女の演技には結構注目していた。時にブリー・ラーソン以外の受賞はありえないだろうと安易に予想できてしまった。もし「力強く心に残る映画」ならば、「ルーム」は間違いなく該当する。ずっと監禁されていた親子のストーリーだが、あくまでメインは脱出後の話。''へや''の存在しか知らないジャックにとって世界は大きく、広く、残酷で美しく、眩しい。ある意味、「マン・オブ・スティール」のクラーク・ケントもこんぐらい苦悩してくれよと一喝したくなるくらい、ジャックから見る世界の大きさは凄まじい。セリフひとつひとつに重みや、ユーモアも、説教臭くない愛溢れる言葉がしみじみと伝わる。しかもこの作品、親と子のすれ違いが時に面白く、時に悲しく苦しむ時がどちらも丁寧に描写されていて全く飽きない。それどころかその辺の「衝撃のラストー!」の宣伝文句してる映画よりよっぽど先が読めない。だが登場人物の背景はあえて説明せず、それぞれの表情やさりげない台詞で感じ取れる。脇を固めるキャストはウィリアム・H・メイシーとジョーン・アレン。両者ともに素晴らしい演技を披露している。特にブリー・ラーソンと口論するシーンなんてホアキン・フェニックスとフィリップ・シーモア・ホフマンの演技対決なみに鳥肌もの。
総評として、並外れた力強さを備えた「ルーム」は映画として真っ当で素晴らしい脚本とキャストで形成された傑作となる一本である。子供はプラスチックのように柔軟…では何を見て、目的は生まれるんだろう。ラストシーンの素晴らしい引き画はしばらく頭から離れない美しいシーンだった。ほぼ満点である。
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