MARUKO

ルームのMARUKOのネタバレレビュー・内容・結末

ルーム(2015年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

部屋で生れ、部屋で育ち、監禁されていることを理解していない子供がいることで、こんなにも変わるのか。部屋から出たら、そこは部屋よりも狭かった。自分はラスト数カットに鳥肌が立った。

この年のアカデミー賞で自分が一番作品賞をあげたかった作品。(2回目の観賞)
監禁されているとわからず、監禁されている部屋がこの世のすべてだと思っているジャック。テレビ以上の物はない。5歳の純粋無垢さ。ベッドの軋みの回数を数える。
5歳になったことでジョイが本当の世界のことを教えようとするが、理解できないのがもどかしい。
“でもチャンスなの”
その必死さがジャックを苦しめ、ジョイを苦しめる。

脱出後、世界を観たジャック。目まぐるしく変わる光景に驚きと恐怖を隠せない。
でも、なんだか部屋が恋しくなる。ジャックにとっては部屋が普通の生活だから、ジャックにしか分からない幸せがある。ばぁばとケーキを焼くシーンはとても切なくなった。ジョイの方は、やっとの思いで出れた喜びと安心感。でもしばらくすると、部屋の事件を報道されたことによるマスコミの囲いを受けて、結局家を出られないで心苦しい。
ジャックがなかなか部屋の時と変わってくれない、普通になってほしいと苛立ちを覚える。
そして一番はあのインタビュー。

“それがジャックにとって最良だったか”

監禁中ジャックが生まれたことで変われた。でも、もしかして私はジャックを自分の心のささえにしていただけなの?まるで利用していたかのように思えてしまう、その質問のせいで。観ていてとてもつらくなった。

ブリー・ラーソンとジェイコブ・トレンブレイの演技が最高すぎる。ブリー・ラーソンは主演女優賞文句なし。ジェイコブは主演男優賞になぜノミネートされていない!いままでみた子役の中でダントツ。
部屋を出る前と出た後の広さの違いを感じさせる、ジャックの戸惑う目線を伝える撮影。部屋を出た直後ジャックが受ける音、光、人の目など誇張された表現。海、道路、木…部屋の中のもので表現されて、部屋にはジャックが知りうるすべてがあると感じさせる。随所にこだわりと細かい気配りが見られて素晴らしかった。この映画の好きなところを上げたらキリがない。

子供はプラスチックなのかもしれない。刺激で簡単に形が変わり、すぐに固まる。いつの間にか順応している。大人はそうはいかない。一度受けた傷はなかなか修復できない。部屋であったことは部屋であったこと、それはそれ、ママがいればいい。大人にはできない考え方が子供にはできる。ジョイはまたこの子に助けられる。
部屋にもう一度戻ったとき、あんなに広かったあの部屋がすごく狭くみえる。“ママも部屋にさよならして”その言葉に体が固まるほど衝撃をうけた。
MARUKO

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