狭須があこ

ルームの狭須があこのレビュー・感想・評価

ルーム(2015年製作の映画)
3.9
なんでアメリカってこんな天才子役がポンポンいるのだ。
今のところ演技が微妙と思ったの「チャイルド・プレイ」と「シャイニング」くらいだと思う(ただしあの二人はめちゃくちゃ見た目がかわいい)

別に意図して選んでるワケじゃないんですけど、ここんところ監禁モノ祭りです。第3弾。
「部屋」に監禁された親子の実話を元にしたお話なんですけど、ショッキングな内容の割に「監禁」部分の内容がめちゃくちゃ薄い。
監禁者の姿や恐怖は最低限しか描かれず、監禁されている生活の酷さとか悪夢感とかが薄っすい

インタビュアーはマジで酷かった。
どう転んでもリスクがあって、好転したところでデメリットもあるような最悪な場所で選択を迫られた人間に、どの選択がよかったとか悪かったを安全な場所からジャッジするとか
そこもう顔面パンチしていいよ。

子役の表現力をフルに使いこなせる映画はやっぱりスゴいね。
コレは「監禁」からの「解放」の物語ではなく、「部屋」と「世界」の物語ですね。最初は「母」と「子」の2人主人公の物語かなと思ったんですけど、全体を通してジャックの視点で撮られた映画だったから

生まれた時から「部屋」に居たジャックにとっての、「世界」の大きさが変わっていくことが、この映画の特徴ですかね
私たちは空の色も階段の降り方も全部知ってるのに、初めて世界に出て、それを見た瞬間の心の動きを、ジャックと一緒に感じているようでした。
壁の向こうに世界があるなんて、壁の向こうに回らない限り信じようがないよな

だから監禁救出からのドラマティックな展開を期待してたり、母と子が立ち直っていくヒューマンストーリーを期待してたらちょっと面食らうと思います。多分スティーブンダルドリーがコレ撮ってたら私は泣かされたと思うけど、そういう感情を引っ張ってくるカンジではない

むしろジャックの動きが興味深い。
彼は場所に意味を感じたり、変化に対する言い訳をしたりしないのね。彼はただ新しい世界を理解して、順応していこうとしてるだけ
初めてのものを見て、「こんなものがあったんだ!」って受け取る時の感動は私たちにもあるんですけど、彼はただ感想もそこそこにひたすら大量に認識と吸収を繰り返してる
その柔軟性は、大人にはちょっと難しいんだけど、感覚的にそれが伝わってくる映画でスゴイと思った

今までがあってこれからがあるだけっていう、めっちゃ単純なんですけど、大人は未来へ行くために、過去に色々感じちゃう生き物だしね
こういう状況になったときに5歳の子供がどういうふうに世界を認識するのか、っていうことが興味深い映画でした。

子供の世界が急に変わる映画を思い浮かべてみたんだけど、「ミスティック・リバー」は11歳、「8日の蝉」は4歳でしょ
11歳だともう流石に大きいか~、とか、女の子のほうが感受性があるかな?とか、考えたけどそもそもフィクションだしさ
ジャックにしても、将来どういうふうになったかわかんないし。
なんも答えは出ませんでした。ゴメンなさい。

思わぬ何かがあったことは不可抗力だとしても、そのあとスクスク大人になれるといいんですけどね…
狭須があこ

狭須があこ