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ルームのEditingTellUsのレビュー・感想・評価

ルーム(2015年製作の映画)
4.4
Apr. 19th

Lenny Abrahamson監督
Brie Larson主演
Danny Cohen撮影
2014年アカデミー賞主演女優賞受賞

無駄な時間なんてこの世にない。

なんて目線の近い作品なんだろう。JackとJoyそして観客の目線がとても近い作品。心がその目線とともに揺れ動き、最後には小さい窓からふっと飛び立ったような感覚になる。

素晴らしい脚本。前半のストーリーでも一本ドラマが書けるぐらいなのに、そこから広いテーマへと広げていく過程が、めちゃくちゃスムーズだった。普通は後半にかけてストーリーがキャラクターの個人的な話になっていくのだが、この作品は逆で、前半のストーリーで観客も同じRoomに閉じ込めることで、後半にストーリーがワイドになっても、キャラクターたちから離れることはない。
さらに、視点がJackとJoyと行ったり来たりするのだが、その行き渡しにも感動した。時には二人の感情が離れていくこともあるのだが、二人の感情が重なり一つになった時に、JackからJoyへ、JoyからJackへと視点が移動する。それがめちゃくちゃシームレスだから、観客はいつの間にかそれに乗せられている。二人の感情が重なった時には、観客の感情も重なるため、涙が流れる。

撮影は、Danny Cohen。特徴的なクロースアップの使い方は今作品も健在。コンポジションの面でのスペースの使い方もさながらのものだった。いつも彼の作品ではそうなのだが、今作品でも、バックグラウンドというのがキャラクターの感情というものを表現している。視線を誘導するという意味で、バックグラウンドの距離感をレンズを使い分けていた。照明にも感動。Roomのなかでの、一つの窓からしか入らない光と、外に出てからの自然光の光が、カメラで捉えたものではなく、目で捉えた描写になっている。ときにはハイライトを強調し夢のような世界観を表現したり、逆にそれを使って世界とのギャップを表現したり。フラットな照明では妙にキャラクターが生き生きする。でもそれは理想的な生命力ではなく、もがいているようなイメージ。魔術師。

編集も見事だった。ジャンプカットを使って、体感時間を引きのばし、このスローなリズムに乗っかった。さらに、Danny Cohenの撮影を最大限生かすように、気に入ったところは長回しで使う。このめちゃくちゃ意図を感じる編集はストーリーを作る。バックグラウンドが全く描かれない、かなり難しいストーリーなのに、フラッシュバックやそれらが語られることもなく、観客全員が何が起きていたのか想像できるというのは、編集の力だろう。観客たちの心を支配し、伝えたい感情を100%伝えることができていた。もしかしたら、もっといいカットがあったのかもしれないが、Nathan Nugentの味というものを軸においているだけに、全く文句なし。あとは、もしもっと大きな話の展開があるような映画を編集する時に、そのギャップを編集でも作れるのかが楽しみだ。

めちゃくちゃいいチームだったとおもう。これからもこのチームでやっていってほしい。
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