このレビューはネタバレを含みます
大人ってこええ。子どもにこんなに寄り添った映画は初めてです。子どもって不思議だなぁ…
外の風景を初めて見た瞬間、ジャックがトラックの上からみる世界は圧巻でした。
ジャック…本当はちゃんと喋って欲しい。警察にはやくぶちまけて、少しでもはやくジョイを保護してほしい…
だけど同時に感じる…これ絶対無理だ!
なにも特別なものは映ってないのに、心臓がバクバクするほどの圧迫感があるのに、でもただの景色見て、訳がわからないほど感動している。
映画で少しルームを追体験しただけでもこの狼狽、生まれてからずっとルームに居たらどんな風に感じるのだろう?
くらくらして、焦点が合わないから周りのものが捉えられなくて、混乱して、言葉も忘れて茫然自失としてる。声が音にならない。
これはそのままカメラワークや世界観にも現れています。
この映画、おれはジャックが外に飛び出したシーンで最高潮に興奮したけど、どちらかといえば外に出てからのストーリーでした。
ここからが長い…
2人を待ち受けるのは雪崩のように押し寄せる世界、そして解放されたはずなのに大きな苦悩を伴う、とてつもなく長い残りのストーリー。
観客にとっても長いストーリーが始まります。
2人がすぐに世界に順応して、幸せそうになってくれたらどんなに楽だったか!そんな単純ではないのだ。
マスコミとか周りの騒ぎたてる人たちは最低でした。インタビュアとか同情してる風の顔してずけずけ踏み込んでくる感じがとても気持ち悪い。。
個人的にはなぜか厚化粧がけっこうキツかったです。インタビュアの厚化粧も吐き気がするし、ジョイの厚化粧もすごい嫌な気分。ジャックから離れていってしまうような印象を与えられたからかもしれません。
世界に出ても、またルームなのです。
子どもはプラスチックのように柔らかくて、どんどん吸収していくけれど、ジョイの傷は深くてむしろ外に出てからの方がどんどん気持ちが塞ぎ込んでいく。
ジョイは精神的には決して脱出できない。久しぶりの世界は、あまりに以前と異なっていて、どこを向いても自分は異質なモノに見えて、溶け込むことができません。
祖母とレオの包容力が唯一の救いです。ジャックは祖母に愛してると伝えます。母親以外に心を許した感動的なシーンでした。
ジャックは、祖母に「部屋の中は狭かったでしょ?」って聞かれた時、「広い、端が見えないくらい広い」と答えます。
ルームもまた、世界なのです。
全ては捉え方次第。
頭の中には犬のラッキーがいて、壁の外には宇宙空間が広がっている。宇宙からみたら地球だってほんの小さい部屋に過ぎない。
ジャックにとって、頼れる人はママだ。ジョイにとっても頼れる人は息子だ。
外の世界が2人のために何かできることはあるだろうか。きっといつまでも、2人の関係は2人だけのもので、お互い助け合って生きていくのではないだろうか。