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O侯爵夫人のnagashingのレビュー・感想・評価

O侯爵夫人(1975年製作の映画)
3.5
多様で複雑な恋愛観を持つ男女関係のグレーゾーンを皮肉っぽくとらえた現代劇にたいして、18世紀末の強固な宗教観がはっきりとシロクロの判断をくだしてしまうこの歴史劇の風とおしのよさはいい意味で意外だった。明晰なせりふ、端正で禁欲的なショットのつらなり、自然光を採り入れた照明、この監督の持ち味と原作の前近代的な世界観がバランスよく調和している。
ぶつ切りのシーンのつみかさねや字幕による進行を多用する性急で淡白なストーリーテリングに初めとまどったが、それはしだいに身に覚えのない妊娠でふくらんでいくおなかへの違和感と連動して、「気持ちが追いつかないもの」のサスペンスとして結実していく。この駆け足な流れと室内の奥行きをじゅうぶんに使った長いカットで構成されるシークエンスの緩急がまたすごい。
フュースリの『夢魔』は参考というかもはや引用で、「悪魔」に襲われる以前からすでにあの絵の構図を再現していた侯爵夫人の寝姿は、ずっこけ必至なオチの予言だと読めないこともない。