nagashing

O侯爵夫人のnagashingのレビュー・感想・評価

O侯爵夫人(1975年製作の映画)
3.5
歴史劇ゆえの強固な宗教観がはっきりとシロクロの判断を下してしまう。この風とおしのよさが良い意味で意外。複雑な男女関係のグレーゾーンをアイロニカルにとらえた現代劇とは対照的。明晰な台詞、端正で禁欲的なショットのつらなり、自然光を採り入れた照明など、この監督の持ち味と前近代的な世界観がバランスよく調和している。編集のブツ切り感や、字幕による性急で淡白な進行にはとまどったが、それはしだいに身に覚えのない妊娠でふくらんでいくおなかへの違和感と連動して、「気持ちが追いつかないもの」のサスペンスとして結実。この駆け足ぎみな展開と、室内の奥行きを活かした長まわしで構成されるシークエンスの緩急がまたすごい。
nagashing

nagashing