あでぃくしょんBBA

ボブという名の猫 幸せのハイタッチのあでぃくしょんBBAのレビュー・感想・評価

3.2
2022.09.10 配信で視聴

「ホームレスだった男と野良猫の実話」としてではなく、
「薬物依存症者の回復物語」として観た。

“年齢にかかわらず誰もが観られる映画”にする都合で
事実より軽めの描写かつ
ハートウォーミングなフィクションを交えていると思われるが、
主役俳優の風貌が役柄(傷つきやすい男)にぴったりで
顔相のいい太猫が堂々と演技?しているため、
大きな違和感を感じることなく観ることができた。

ただし、“ラッキーがいくつも重なった末の奇跡”のようなこの話は、どのジャンキー、どのホームレスにも可能な物語ではない。「幼少期に保護者から愛され保護された記憶」があり、「生まれつきの性格が自己中ではない」ヒトでなければ成立しない。
その一日を生きるために嘘をついても、物を盗んでも、捕まって罰を受ける恐怖や屈辱ではなく、そこに罪悪感があるかどうか、他人を信用し自分も他人に信用されたい欲求があるかどうかで、同じことをしても“人となり”はまったく違う。
実在しているらしい主人公は、一時期ではあれ、人生の早い時期におそらく良い保護者と暮らした経験があるのだと思う。彼がどういう経緯で薬物に染まったのかはわからないが、優しいけれど弱くて怠惰癖もついた人が、ちょっとした気分転換で手を出したつもりでその魅力にずるずるハマってしまうのだろう。

マスコミによれば、この映画の製作国であるイギリスは現在、エリザベス女王の逝去によって国中が喪に服している最中らしい。テレビでも、インタビューに応えて「女王は国のために尽くした」と女王の死を悼む人々の姿が映し出されている。
が、
コロナ禍前の2017年ごろに当のイギリスで社会問題化した“急増するホームレス”たちはどうしているんだろうか。
イギリスのホームレスとアルコールを含む薬物依存は切っても切れない関係にある。彼の地でのホームレスというと、“下層社会を構成する有色人種や他国からの移民とその家族”が連想されがちだが、親のみならず祖父母もイギリス国籍者である白人種の若い世代のホームレス&ジャンキー化が特に問題になっていた。
きわめて安価でありながらマリファナより100倍効果が高いといわれて若年層やホームレスに蔓延した“スパイス”が禁止薬物になったことと、社会問題化したおかげで多数のホームレスが救護施設に収容されたこととで翌2018年には減少傾向にあると報道された。しかしそれで解決とはなっていないはず。
薬物と路上生活で身体がボロボロな上、コロナウィルスに感染し、多くが命を落としただろうが、生き残れた彼ら彼女らの声も聴いてみたい。
あでぃくしょんBBA

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