MasaichiYaguchi

ボブという名の猫 幸せのハイタッチのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.8
全英でシリーズ累計150万部超のベストセラー実話を「英国王のスピーチ」の製作陣が映画化した本作を観ていると、出会いの大切さが伝わってくる。
プロのミュージシャンを目指す主人公ジェームズ・ボーエンは、その夢も叶わず、家族間でのトラブルもあって薬物に依存して、現在更生中の若者。
収入も無く、ホームレスとして寄る辺ない日々を送るこの若者に救いの手を差し伸べるものたちがいる。
彼を再起させる為にサポートする更生係のヴァル、そして再出発の地で知り合った動物好きで訳ありのお隣さんのベティ、彼女らが彼を心身共にアシストするのだが、彼にとって最大の支えとなったのが茶トラの猫ボブとの出会い。
この作品ではボブ本人が多くのシーンに登場していて、そのキュートな表情や仕草で愛猫家を含めた我々をメロメロにしてしまう。
「一期一会」という、一生に一度だけの機会を意味する言葉があるが、その出会いは何も人とは限らず、ジェームズの場合のようにこのボブという名の猫である場合だってある。
恐ろしい薬物依存や慢性的な貧困からの脱却に、この一人と一匹は正に身を寄せ合って真正面から立ち向かっていく姿や、そして善意ばかりではない世の中で、彼らが悪意にも逆風にも負けず頑張ることで、周りが彼らを認め、見方が変わっていく展開に心揺さぶられる。
ジェームズがストリートミュージシャンいうことで、劇中で楽曲が幾つも披露されるが、このチャーリー・フィンク(元ノア・アンド・ザ・ホエール)による楽曲はこのハートウォーミングなストーリーに寄り添い、そのシーンを盛り立てていく。
愛猫家の人々だけでなく、ジェームズのように困難な状況の中でもがいている人々にも、この一人と一匹の物語は前を向く勇気を与えてくれると思う。