現在は生放送で感想中の丈兄丸

ボブという名の猫 幸せのハイタッチの現在は生放送で感想中の丈兄丸のレビュー・感想・評価

4.0
依存症から抜け出せず生活もままならない中、それでも路上ライブで生計を立ててこうとするジャンキーが、とある猫との出会いを通して人生を変えていく、実話を基にした物語。
タイトルやパッケージから、ほんわかした雰囲気の感動モノかと思いきや、実話がベースになってるだけあって、ジャンキーや貧乏人が社会で生きていくことの辛さや、ドラッグ症状の悪夢的描写は、誇張されすぎてないからこそ鬼気迫るものがあり、
また作品全体としても、いわゆる“感動モノ”という色を出さない・飾らない語り口が、逆にリアルティを持ち、
勿論麻薬経験はない自分だが、意志や理想を貫いて社会で生きていくことの難しさに共感を覚え、自分でも思わないところで度々ウルウルさせられた。

しかし同時に、平和的な日常シーンは、パッケージからもさほど違和感ない、ちょっとおしゃれでチャーミングな画作り・音楽などが心地よく、主人公の歌う唄も、シンプルに響いてくるものがあった。
そして何より、他の方々が口を揃えて言うのも納得の、絶妙なボブ(猫)の愛くるしいショットの数々。しかもこの実際の物語に出てくる本物のボブが今作でもほとんど出ているらしく、それだけでも凄い貴重な作品になっているのだが、そこにロンドンのオシャレさ・美しさも相まって、ボブが映えるシーンの一つ一つが、そこだけ切り取って何度も見たくなるほど素敵な画作りで、癒し要素としてもしっかり味わえた。

私も天邪鬼なので、こうしたいかにも動物感動作!といった文句で来られると構えてしまいがちだが、
少なからず私自身は、そうしたくどい内容どころかシンプルに見入るものがあったし、何よりこれが実話だったということに、より一層上を向いて帰り道を歩きたくなった。

もし、自分もどうしようもなく孤独になり、またまともに他者と関われなくなる時が来てしまった時は、
こんな風に野良でも猫と触れ合ってみたらどうだろう…と、
そんなこと思わせてくれる一作でした。