ベルサイユ製麺

ボブという名の猫 幸せのハイタッチのベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

3.9
ロンドンの路上で弾き語りをして、ギリギリくちを糊する若者ジェームス。生ゴミを漁り、道端で眠る。父からも見放された重度のジャンキーで、現在はメタドンを服用しいつかはヘロイン断ちをしようと思うのだけど…。
彼の更生への熱意を信じたソーシャルワーカーは彼に住居を用意。そして、孤独なジェームスの元にヒョッコリ潜り込んで着たのが、はい!グリーンアイズ・茶トラキャット(遊戯王風)のボブなのでした!よっ!お引きがお強いですな‼︎
ボブとの出会いはジェームスの生活を少しづつ好転させていきます。ボブを連れての弾き語りは大盛況。ご近所に住む動物好きの女性ベティ(ヴィーガンでアクティビスト!)との出会い。ボブを通して世間と関わり、何より生活に潤いが生まれました。しかし勿論良い事ばかりが続くわけではありません。度重なるトラブルで経済面は不安定なまま。父さんの前では上手く振る舞えない。更にかつての仲間の身に起こる或る出来事…。ついにジェームスはメタドン治療を辞め、完全なドラッグ断ちをする事を決意します!

これはマジ正しい。どこも間違ってない。しかも実話ですよ!
想像したまえ、肩の上に乗ってくださる可愛い茶トラを。漫画みたいに穴から出てくるネズミを追い回す茶トラを。ダブルデッカー、二階の最前列の特等席でロンドンの街並みを眺める茶トラを。圧倒的じゃないか。猫は完全無欠の正義。仮にもしこれがタコだったらどうだろう。『ボブという名のタコ』。巨大なタコを肩にのせたり、じゃれ合ったり。殆ど『お嬢さん』みたいな絵面で、…まあそれなりには面白そうですね。でも飢えに耐え切れず脚の2、3本は…。
ロンドンの貧困層の暮らしぶりやジャンキーのリアルな末路が垣間見れるのも興味深い点です。ジェームスがビッグイシュー販売者になる辺りはフィクションだと思いつかなさそうですね。そういえば、ビッグイシュー販売を見かけると必ず購入していた知人がいました。販売者の私物の単行本も買い取ったりして。今も元気で居ますかね?こっちはまあ、ギリであれですよ。自分もたまにビッグイシュー買ってます。

貧困で、孤独で、依存症。そんな人そこらじゅうに居て、自分もその類だとも思います。ジェームスにはたまたまボブが来てくれた、ただのラッキーガイだと、言ってしまえばそれまでなのだけど、別に転機なんてそんなにドラマチックな物事で無くても良いのだとも思うのですよね。「この映画観た!」とかでも。
ボブは可愛い。落ち着いてる。でも、ごく普通の茶トラで、そここそが最高。映画のボブ、実は本人なのですね。長生きしてね。また何度も生き返ってね。いつかはウチに来ても良いのだよ?

物語の中盤、メタドン断ちを提案するジェームスをソーシャルワーカーが諌めて曰く、「今はその時期では無い。クリスマスは不安定になる人が多い…」
ぎゃあああああああああああ
もう10月中旬じゃないくわあ!(アユニD風)
何処かに私とハイタッチしてくれる猫はおらんかのぉ〜。最悪タコでも可。食べたりしないよ。(食べる)