アンタレス

マダム・フローレンス! 夢見るふたりのアンタレスのレビュー・感想・評価

3.5
これは、とあるオペラ歌手の物語である。
父の遺産を受け継ぎ、音楽家のパトロンとして芸術の世界に名を馳せるフローレンス(メリル・ストリープ)。音楽に対する愛情は深く、夢だったオペラ歌手としての活動を始めたフローレンスは、『ヴェルディ・クラブ』を設立し私的なリサイタルを開いていた。
優秀なお抱えピアニストにも廻り合い充実した音楽活動を謳歌していたフローレンスだが、歌手としての致命的な欠点を抱えていた。フローレンスは絶望的なまでに音痴であり、本人はその事実に気付いていないのである。
新聞やラジオで嘲り混じりの紹介をされるものの、珍しい物見たさからフローレンスの人気は上昇して行く。
そして長年苦しんだ梅毒で亡くなる間際には、カーネギーホールでの大舞台に立つことが出来た。
これは、今尚カーネギーホールのアーカイブリクエストで一番人気を誇る、世界一下手なオペラ歌手の物語である。


何よりもフローレンスの周りの人間の温かさに触れる作品である。
陰に日向に懸命に尽くす夫や、専属ピアニストの青年だけでなく、最初はフローレンスを馬鹿にして笑っていた女性まで、フローレンスの全力の歌声のファンになっているのである。
コメディ作品としても、ドラマ作品としても中途半端ではあるものの、観賞後は温かい気持ちになれる良作である。
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